【農林水産省】酪農家が1万戸割れ 価格転嫁などに力

全国の生乳の生産者団体などでつくる中央酪農会議(東京)は12月2日、指定団体が販売の委託を受けている酪農家の戸数が初めて1万戸を割り込んだと発表した。この5年余り3割も減っており、「生産基盤の危機を迎えている」と訴え、将来、国産の牛乳・乳製品が入手しにくくなることも予想されると指摘する。

 同会議の集計では、2019年4月は1万3384戸だったが、24年10月時点で9960戸になった。同会議によると、アンケートでは、酪農家の58・9%が赤字経営だと回答した。さらに、酪農家の約半数(47・9%)が離農を検討しているという。

 経営悪化の要因として、円安、原油高、ウクライナ情勢などが目立った。上昇する生産のコストとしては、濃厚飼料費(配合飼料等)、農機具費、光熱水料・動力費と続いた。

 12月6日には、農林水産省の江藤拓大臣の定例会見でも記者団からこの1万戸割れについて質問が出た。江藤大臣は、「一つの大きな節目を迎えてしまったと」との所感を示した。

 ただ、「後継者がいないので今のうちに営農を止めておこうという判断もある。それぞれの事情はまだらです」と前置きし、政府として酪農家を支援し、牛乳の消費拡大に取り組むことを強調。さらに「私も毎日、朝は必ずヨーグルトを食べてから仕事に出ます」と個人の立場で努力していることも付け加えた。

 協議会では特に、飲用牛乳についてはワーキンググループをつくって検討している。1リットル入りの牛乳は、スーパーで特売の品になりやすく、価格の引き上げが難しいとされるが、農水省は包装材や輸送費などきめ細かいコストの項目を整理して、流通業者や消費者の理解を得ていく考えだ。

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