ホタルの発光物質「ルシフェリン」を簡便に作り出す、実用的な合成法を初めて開発したと、名古屋大学(名大)、産業技術総合研究所(産総研)、中部大学の3者が12月25日に発表した。ホタルとほぼ同じ原料を使い、常温常圧で反応が進むため安全性が高く、ホタル発光系を使った分析法のより広範な利用が期待されるとしている。
ホタルの生物発光は、身近にみられる幻想的な生命現象として知られるが、その光は発光物質 D-ホタルルシフェリンと酵素ルシフェラーゼによる酸化反応によって発生するもので、ルシフェリンールシフェラーゼ反応(L-L反応)と呼ばれている。
この発光反応には酸素とマグネシウムイオン、ATP(アデノシン三リン酸)が必要なため、それを利用したATPの高感度測定が開発されている。ノイズが少なく高感度で検出できることから、病原菌などの簡便・迅速な検出法(ATPふき取り検査)として、食品工場や医療現場での衛生検査に用いられるなど、公衆衛生上の重要な役割を担っている。
また、組換え遺伝子の発現をモニターするレポーターアッセイや、ライブイメージングにも使われるなど、生命科学分野の実験で欠かすことのできない技術としても活用されている。
ホタルの生物発光における反応で使われているルシフェラーゼタンパク質は、遺伝子組換え大腸菌を使った大量生産法が確立済み。いっぽうで、ホタルが体内でどのようにしてルシフェリンを合成しているか(生合成)は、1964年のルシフェリンの構造決定以来、多くの研究がなされてきたものの、ほとんど未解明だという。
ルシフェリンの生合成の大半が未解明であることから、現在は多段階の環境負荷の高い方法での化学合成によって供給されており、おおよそ10mgの分量で15,400円と非常に高価なうえ、合成には特殊な耐熱密閉容器を用いて約200度という高温で加熱する反応が含まれており、危険を伴うという課題を抱えていた。