所得税が課される年収の最低ライン「103万円の壁」の見直しを巡り国民民主党の玉木雄一郎代表が、総務省が全国知事会などに反対するよう工作をしていたと発言し、物議を醸した。玉木氏は陳謝したが、全国の知事などからは批判が噴出している。
103万円は、基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計で、年収がこれを超えると所得税の負担が生じる。所得税がかかると手取りが減るため、働き控えを招く「年収の壁」の一つとされている。衆院選で躍進した国民民主は、課税最低ラインを最低賃金の伸びに合わせて178万円まで上げるよう求め、与党と協議している。
ただ、178万円に引き上げた場合、国と地方を合わせて7兆~8兆円の税収減が見込まれる。自治体から財政への影響を懸念する声が出る中、玉木氏は11月13日のテレビ番組で、「総務省から知事会や首長に対して工作している」と発言した。
これに全国知事会の村井嘉浩会長(宮城県知事)は「われわれが国のコントロール下に置かれることは全くない。強い憤りを感じている」と反発。玉木氏は「工作という言葉が不快な思いを抱かせたとしたら、おわび申し上げたい」と陳謝したが、その後も、「極めて悪質な発言」(島根県の丸山達也知事)など批判が相次いだ。
玉木氏が指摘した工作について、村上誠一郎総務相は「そういうことはしていないと思う」と否定。玉木氏は「総務省が発言要領まで作っている」とも語っていたが、村上氏は「発言要領について見たこともないし、(発言を)依頼したことも全然ない。何でこういうことをおっしゃったのか、私は残念ながら理解できない」と述べた。
103万円の壁見直しは25年度税制改正の最大の焦点となっているが、実施時期や引き上げ額を巡り与党と国民民主の間には溝があり、調整には時間がかかる見通し。税制改正がまとまる時期は例年よりずれ込み、12月20日ごろになるとの見方が出ている。