加藤勝信財務相の”出番”は春以降ということか。というのも、2024年度補正予算や25年度の税制改正大綱と当初予算の編成で加藤氏が”安全運転”に徹したためだ。
加藤氏は12月9日の衆院本会議で、33年ぶり高水準の賃上げを念頭に「好循環を後戻りさせることなくデフレ脱却を確かなものとし、新たな経済ステージへの移行を実現していく必要がある」と強調。経済再生と財政健全化を両立する方針を重ねて示した上で、日本経済が回復基調にある点を踏まえ、「これを確かなものとし、成長型経済を実現する好機を迎えている」と指摘した。
これに先立ち、政府は歳出総額を13兆9433億円とする24年度補正を閣議決定したが、歳出は石破茂首相が衆院選で物価高対策の規模を「前年並み」と公約した「中身より規模ありきで決まった」(主計局)様相が強い。
25年度税制改正の最大の焦点だった「年収103万円の壁」の扱いを巡っても、基礎控除などを広げて非課税枠を年収178万円まで引き上げるよう求めた国民民主の要求をおおむね受け入れた。
しかも、与党税調幹部の議論が佳境に入っていた11日、自民、公明、国民民主3党の幹事長会談で一気に合意する展開に。自民の宮沢洋一税調会長は直後、記者団に「釈然としない」と苦言を呈したが、24年度補正と25年度予算の成立を”人質”にとられた形の加藤氏は沈黙を貫くしかなかった。
政府関係者は加藤氏について「支持率低迷が続く石破政権と心中する気はないということだろう」と推測する。