東京農工大学(農工大)、中京大学、大阪体育大学の3者は12月23日、バスケットボール選手はジャンプして空中でわずか0.5秒の間にパスかシュートの選択を行うが、その瞬時の意思決定が量子力学の「重ね合わせ」の概念に基づく「パラレル処理」によって説明できることを解明したと共同で発表した。

  • ヒトの瞬時の意思決定が、量子力学の概念に基づく「パラレル処理」によって説明できることを、東京農工大学、中京大学、大阪体育大学の共同研究チームが解明。画像は今回の実験構成図
    (出所:共同ニュースリリースPDF)

同成果は、農工大 工学研究院の若月翼助教、中京大の山田憲政教授、同・日比野朋也実技嘱託講師、大阪体育大の平川武仁教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、行動科学に関する全般を扱う学術誌「Behaviour」に掲載された。

バスケットボールでは、選手がジャンプシュートにおいて空中でディフェンスされ、瞬時に味方へのパスに切り替える華麗なプレーが見られる。従来の研究により、ヒトが動的な目標変更を行うには最低0.186秒の反応時間が必要であることが示されているが、このシュートからパスへの切り替えもわずか0.5秒の間に行われており、その背後にある脳のメカニズムは十分に解明されていなかった。

このような研究は、従来の脳波を用いた心の解析手法では困難だったことから研究チームは今回、精密なタイミング制御技術と高速度撮影を組み合わせた新たなシステムを開発し、科学的な解明を試みることにしたという。

まず、10名の大学バスケットボール選手を対象に、事前の滞空時間検出の予備実験が実施された(その結果、ジャンプシュートは滞空時間の80%である0.416秒までに完了することが確認された)。そのデータを基に、実際のコートにおいて、さまざまなタイミングでパスとシュートを切り替える1350試技が約1か月間かけて行われた。

今回新たに開発されたシステムは、選手がジャンプする瞬間を正確に検知し、選手の滞空時間を基に選択基準となるLEDの発光タイミングを精密に制御するというものだ。ジャンプ直後(0%)から滞空時間の10〜70%までの8段階のタイミングでランダムに、左右前方の2台のLEDのいずれかが発光し、0.5秒間の時間制約の中で、選手は「LEDが光ればその方向へパス」「光らなければシュート」という異なる選択肢を瞬時に判断し、動作を切り替える高度な意思決定が求められる仕組みである。

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