2024年の秋に、ソニーがリング型ドライバーユニットを搭載するオープンスタイルのワイヤレスイヤホン「LinkBuds Open」を発売した。本機がコンピュータサイエンス研究所の視覚障がい者向け歩行支援アプリ「Eye Navi」(アイナビ)と連携すると、音声歩行ナビゲーションにも使えることをご存じだろうか。両社の先端テクノロジーが実現するバリアフリースタイルを取材した。
ワイヤレスイヤホンが人間の健康を支える
ワイヤレスイヤホンにオーディオリスニングの垣根を超えた「新しい価値」を発見し、提案することに力を入れるメーカーが増えている。直近ではアップルもAirPods Proのソフトウェアアップデートにより、軽度から中等度の難聴を持つユーザーのために医療グレードのヒアリング補助機能を提供開始した。ゼンハイザーの「MOMENTUM Sport」はユーザーの心拍と体温を計測するセンサーを内蔵している。ワイヤレスイヤホンの用途はヘルスケア・ウェルネスの領域にも拡大しつつある。
ソニーは2022年に発売したLinkBudsの初代モデルから、視覚障がい者支援を目的とするアクセシビリティ機能の搭載に力を入れている。
最初に話題を呼んだのは、マイクロソフトが2022年にiPhone向けにリリースした3Dオーディオマップアプリ「Microsoft Soundscape」日本語版との連携。地図によるナビゲーションに加えて、LinkBudsを装着するユーザーが顔を向けた方向にある道路や交差点、ショップなどの情報を音声で知らせてくれるという機能が利用できた。ただし残念ながら、2023年6月30日にMicrosoft Soundscapeのサービス自体が終了している。
ソニーでLinkBudsの開発に携わるチームは、視覚障がい者の方々のためにマイクロソフトのアプリに代わる別の音声ナビゲーションを模索してきた。ソニーが国内で開催された視覚障がい者のためのイベントに出展した際、コンピュータサイエンス研究所のEye Naviに出会ったことで協業が始まった。詳しい経緯については、LinkBudsとEye Naviの連携が始まった2024年5月のニュース記事を参照してほしい。
ソニーのLinkBuds Openは耳に挿入する本体の中心に穴が空いている。そのため、装着してサウンドを再生しながら周囲の環境音が同時に聞けるユニークなワイヤレスイヤホンだ。内蔵マイクによる外音取り込み機能との違いは、周囲の環境音がより自然に聞こえるところだ。
コンパクトな本体には3種類のセンサー(加速度・ジャイロ・地磁気)を内蔵。ユーザーの顔の向きに再生中のサウンドを連動させるヘッドトラッキング機能や、イヤホンを身に着けて移動するユーザーの方位を割り出してマップデータに反映させるサービスなどに対応する。
ChatGPTにも対応した障がい者歩行支援アプリ「Eye Navi」
コンピュータサイエンス研究所が開発するEye Naviは、2024年12月現在でiPhone対応のアプリがリリースされている。アプリが搭載する独自のAI画像認識エンジンにより、視覚に障がいを持つ方々のための歩行支援として、障害物検出を行ったり、点字ブロックだけでなく歩行者信号の色なども音声で知らせてくれる。