NTT東日本 埼玉事業部は12月10日、日ごろの設備運用や保全業務で培った知見、およびAI・ICT・映像等の技術を活用した設備運用の安全性向上や、自治体や民間企業のDX推進支援の取り組みを紹介・体験してもらうイベントとして、「DX体験会」と「2024年度関信越安全スタジアム」をさいたま市大宮区で開催した。約450名の来場者があったという。
同社は、このイベントを通じて業務におけるDX推進のイメージを膨らませてもらうことや、業務課題抽出や困りごとの解決につなげてもらうことを狙っている。
AIを活用した業務DXや現場DXにつながるソリューションを数多く展示
「DX体験会」の会場は、事務業務DX、地域活性化、現場作業DX 、防災減災、通信環境調査、企業向け研修の6つのエリアに分けられ、約25のソリューションが展示されていた。
「事務業務DX」の展示
事務業務DXでは、AI-OCR×RPAによる手書き帳票のデジタル化・自動化による事務作業のペーパーレス化・効率化のほか、各種センサを用いた作業の自動化や省力化の事例紹介、デモを行っていた。
人気の生成AIを業務に活用する事例も紹介され、生成AIを使って時間単位の有休が年間何日取得できるのかについて、社内規則を基に生成AIが回答するデモが行われていた。
「地域活性化」の展示
地域活性化のエリアでは、AI(画像検知)による混雑検知や人流データ分析による地域活性化の事例を紹介。混雑検知では、イベント等の混雑状況をAIの画像検知により来場者数を把握し、自動化されたデータ分析と組み合わせて可視化。人流データ分析では、GPS位置情報を用いた人流データや公開情報を活用したデータ分析による観光やイベント等における地域活性化事例を紹介していた。
また、3D・メタバースを活用したデモも行われ、室内の写真をつなぎ合わせることで建物内を3D化し、ヘッドマウントディスプレイを使って、3D化された空間を歩きながら体験できるデモも行われた。
「現場作業DX」の展示
現場作業DXのエリアでは、AIによる画像検知として、侵入禁止エリアに人が立ち入った場合に警告を出す事例や、業務車両が敷地から出ていく際に、歩道の前で一時停止したどうかを確認するシステムが紹介されていた。
また、現場作業や管理業務を効率化するアプリケーションが搭載されたWebサービスもデモを通じて紹介。デモでは、その会社のフォーマットに従って、スマートフォンやタブレットで現場作業の報告を入力すると、それが自動的にクラウドにアップされていた。
また、VRを活用して危険をバーチャルで体験する安全教育のほか、橋梁点検や映像配信等ドローンを活用した業務効率化事例のほか、ドローンシミュレータによるドローン操作体験ブースも設けられていた。
「防災減災」の展示
防災減災のエリアでは、地域の避難所の場所、災害発生個所等の可視化を通じた防災PF機能の紹介のほか、携帯電話網やWi-FiなどのIP通信網を利用し、同時配信と即時集計を実現する「@InfoCanal」を紹介していた。
「通信環境調査」の展示
通信環境調査のエリアでは、ネットワーク調査による通信品質改善、Wi-Fiの接続が不安定な際の無線設計を支援するサービスを紹介。
「企業向け研修」の展示
そして、企業向け研修エリアでは、業務DX・生成AIに関する研修支援、大規模災害発生時の事業継続マニュアル等規定類作成支援、サスティナビリティ意識醸成、理解促進と具体的な行動につなげるワークショップ型研修として、SDGsカードゲームの紹介を行っていた。
ナッジ理論を活用した安全対策を実践
同じ会場では、社内の安全大会である「2024年度関信越安全スタジアム」も開催、一部がプレスに公開された。
同社は2023年度からナッジ理論を用いた安全対策に取り組んでおり、同日は、アイデアコンテストも実施された。
ナッジ理論とは、アメリカの行動経済学者リチャード・セイラー博士が提唱した理論で、人々が良い行動を選択できるように後押しする仕掛け。ナッジ(nudge)は、英語で「肘でつついて促す」という意味があるという。
同日は、ナッジ理論を推進しているNTTデータ経営研究所 地域未来デザインユニット/行動デザインチーム マネージャーの小林健太郎氏が、ナッジ理論について講演。同氏はナッジ理論を「人間は正論で『これやるべきだよ』『こうしてね』といわれてもなかなかできない。つい間違ったことをしてしまいがちです。そういう人間の癖を踏まえた上で、環境にちょっとした工夫をすることで、本人にとって望ましい行動を後押しするアプローチになっています」と説明した。
ナッジ理論の活用例としては、アムステルダムのスキポール空港のトイレで、「的があると狙ってしまう」という人間の特性を活用し、男性小便器の内側にハエの絵を描いたところ、床の汚れが激減。清掃費が8割減少したという例があるという。
また、東京都八王子市では、大腸がん検診の受診率が低く、働きかけの手法が課題となっていた。そこで未受診者に対して、「今年度の検診を受診しなかった人には、来年度は受診キットを送付しません」と案内したところ、受診者が大幅に増加したという。これは、人間はこれまで享受していた利益を失うという“損失を回避したい意識”への働きかけだという。
2024年度のアイデアコンテストにおいては、ナッジ理論を応用した転落、落下、逸走(重機)、道路横断(飛び込まれ) 、感電、酸欠という6大重篤事故の防止策を募集。137件の応募があり、この中から選ばれた7つのアイデアについて、社員の投票により最優秀賞と優秀賞を決定。最優秀賞には、「雨の日だけ浮き出る!?スリップ注意喚起ステッカー」が、優秀賞には「そこ持てばOK!高所作業者用手足マーカー」が選ばれた。
なお、NTT東日本 埼玉事業部では、忘却曲線に着目したナッジ施策を実施しており、人間は学習したことを徐々に忘れていってしまうという忘却曲線に注目。人が思わず見てしまうという特性を利用し、AIを活用し“意図せず目につく画像”を生成、ポスターに利用している。
このポスターの効果について、今年の5月下旬から6月下旬に、一部のオフィスビルでトライアルを実施したところ、94%の人が記憶の定着効果があると回答したという。