「金利ある世界」復活で顧客還元強化
生命保険各社が、保険契約者に対して約束する利回りである「予定利率」を引き上げる動きに出ている。11月21日には最大手の日本生命保険(清水博社長)が、25年1月から年金保険や終身保険の予定利率引き上げを発表。同社の予定利率引き上げは約40年ぶりのこと。
例えば年金保険では予定利率を0.60%から1.00%に引き上げるが、これによって保険料は最大5%程度の値下げとなり、保険契約者の負担は軽くなる。
今回の予定利率引き上げについて日本生命専務執行役員の赤堀直樹氏は「お客様により低廉な保険料で保障を提供していきたいという思いがあったが、市場環境を理由に今までは実現できなかった」としながら、日銀の利上げなど「将来的に短期だけではなく長期の先高感も確認されつつある状況から、予定利率引き上げを実施した」と話す。
予定利率を引き上げた保険商品の売れ行きはどうなるのか。例えば、24年4月に個人年金保険の予定利率を0.65%から最大1.35%に引き上げたのが富国生命保険。平準払いの貯蓄性商品である個人年金保険「みらいプラス」の販売件数は23年度上半期から24年度上半期で7.3倍、新契約年換算保険料は9.3倍に拡大した。
「新NISA(少額投資非課税制度)」がスタートし、人々が資産形成への関心を強める中、貯蓄性商品の魅力を高める上で予定利率の引き上げは重要。
営業職員にとっての影響も大きい。新NISAなどの投資と比べてリスクが低い貯蓄性商品の魅力が高まれば、以前から課題とされていた最初の顧客接点を持つ際の武器になり得る。
ただ、各社が一様に予定利率引き上げに動くかは見通せない。他の大手生保の中でも引き上げているところも出ているが、利率の上げ幅、上げ方は様々。それは保険会社が標準責任準備金を積む際の利回りである「標準利率」を予定利率が上回る時には標準責任準備金の積立負担が生じるため、財務面で重荷になりかねないから。
その意味で、契約者への還元競争はすなわち、財務の健全性を競う競争だということも言えそうだ。