東京ドーム85個分の広大なエリア開発
「2050年のカーボンニュートラルに向けて、いち早く川崎から一歩を踏み出す」と話すのは、JFEホールディングス専務執行役員の岩山眞士氏。
JFEは神奈川県川崎市にある東日本製鉄所京浜地区で操業していた高炉を2023年に休止、現在その跡地の活用計画を進めようとしている。その土地の広さは約400ヘクタール。東京ドームに換算すると85個分という「国内では例のない広さ」と岩山氏も話すほどのスケールの大きな開発となる。
注目されるのは、次世代エネルギーとして期待される水素を軸とした「カーボンニュートラル」の拠点としての活用。高炉跡地である扇島地区では川崎重工業、岩谷産業が共同出資で設立した「日本水素エネルギー」がJFEから土地を賃貸し、「液化水素」の受け入れ基地を設置する方針。
それ以外にも、大水深バースを活用した港湾物流や、高度物流の開発、次世代モビリティなど、様々な新産業を生み出す場所とすることも目指す。
400ヘクタールの土地活用の第一歩として、JFEの前身の1社である旧日本鋼管の創業の地である南渡田北地区ではヒューリックが主導して、研究施設や、それに関連する商業、宿泊施設の整備を進める。
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また、扇町地区の約21ヘクタールはニトリに売却。ニトリは自社の物流施設「(仮称)ニトリ川崎ディストリビューションセンター」を整備する予定。
JFEとしては、この高炉跡地で事業を開発し、それを鉄鋼、エンジニアリング、商社事業に次ぐ「第4の柱」としたい考え。水素活用の事業化に加え、この地域では使用済みプラスチックをリサイクルするための拠点も設けた。25年4月に稼働する。
ただ、カーボンニュートラルについては、米国でトランプ政権が誕生することで「巻き戻し」の懸念が出ている他、液化水素の調達の難しさや、水素の将来像が定まっていないといった課題もある。
だが岩山氏は「ここで前に進んでいかないと、後から水素が欲しいといっても遅れてしまう可能性がある」と危機感を見せる。新たな柱づくりへの覚悟が問われる。