スペースワンは12月18日、カイロスロケット2号機を打ち上げたものの、飛行中に異常発生。約3分7秒で飛行を中断し、打ち上げは失敗した。カイロスの打ち上げ失敗は、初号機に続いて2回連続。固体ロケットは液体ロケットに比べてシステムがシンプルであるものの、改めて新型ロケット開発の難しさが浮き彫りになった形だ。
飛行中に何が起きた?
カイロスロケット2号機は、高層風の影響で2回延期されたあと、この日の11時00分に打ち上げが行われた。機体は順調に飛行を続けているように見えたが、同社によると、打ち上げ後80秒過ぎに、ノズルの駆動制御に異常が発生したという。第1段は姿勢を維持できない状態になり、地上からはタンブリングしているように見えた。
明らかに正常な飛行状態ではなかったものの、その後もシーケンスは進み、第1段分離が約141秒(計画では148秒)、第2段点火が約142秒、フェアリング分離が約168秒(計画では175秒)に行われた。しかし、ここで事前に設定した飛行範囲を超えそうになったため、約187秒に、機体側の自律飛行安全システムが飛行を中断した。
なぜ第1段の飛行中に自律飛行安全が作動しなかったのか。これについては、この段階では飛行を中断したときに部品が予想した海域外に落下することを避けることを主要な目的としており、姿勢の異常は条件に入っていないとのこと。第1段の飛行中から経路はズレ始めていたが、第2段の飛行中に限界に達し、そこで中断したというわけだ。
ただ、正常な飛行でなかったとはいえ、第1段の燃焼終了まで行けたことで、機体の最高到達高度は110.7kmを記録。ミッションである人工衛星の軌道投入は果たせなかったものの、宇宙空間に到達することはできた。この点については、初号機からの大きな前進と言える。
今回の2号機の打ち上げについて、スペースワンの豊田正和社長は「失敗とは考えていない。得られたデータや経験は非常に貴重で、次の挑戦に向けての糧になる。3号機でも、それを加速することができる」と、初号機のときと同様に前向きにコメント。次の3号機については、「顧客に開発状況を説明し、了解を得た上で衛星を載せたい」とした。
なお同社は、カイロスの打ち上げを7段階のステップで考えており、ステップ1の打ち上げは初号機で達成。今回の2号機では、ステップ2の第1段ミッション完了、ステップ3のフェアリング分離まで達成したとの考えを示した。ただ筆者としては、第1段の姿勢があれだけ異常だったのであれば、ステップ2が達成というのはやや無理があるように思える。
飛行中断の原因はどこに? どうなるカイロス3号機
打ち上げ後の記者会見では、同社の遠藤守取締役より、今回のフライトで発生した問題について説明があった。ただ、現時点で分かっているのは、前述のように「ノズルの駆動制御に異常が発生した」ということだけで、それ以上のことは不明。原因については、今後、FTA(故障の木解析)で絞り込んでいくことになる。
カイロスロケットでは、第1段の姿勢制御は、ノズルの向きを変えるTVC(Thrust Vector Control)によって行われる。これはざっくり言うと、指先に傘を乗せて、うまくバランスを取るやり方に似ている。カイロスの詳細な仕様は公開されていないのだが、遠藤取締役によると、このTVCには電動アクチュエータが採用されているそうだ。
なおTVCでは、ピッチ制御とヨー制御はできるが、カイロスのように中央に1基だけノズルがあるタイプだと、ロール制御ができない。カイロスに構成が似ているイプシロンロケットでは、ロール制御のためにサイドジェットが搭載されているのだが、遠藤取締役によると、カイロスの第1段にサイドジェットはなく、ロール制御は行っていないそうだ。
ノズルの向きは、進行方向や姿勢を制御するために少し動くことはあるものの、通常のフライト時には、目一杯振れるようなことはない。しかし今回のフライトでは、搭載されているポテンショメータにより、大きく振れていたことが確認できているという。
ただし、TVCの異常かどうかは、まだ分からない。ロケットの姿勢を検出するセンサー部に異常が発生していたら、姿勢が乱れていると勘違いしてノズルを大きく振ることもあるし、ノズルが破損して横方向の推力が発生していたら、そのトルクを抑えるためにノズルが動くだろう。制御プログラムの問題で動きが発散した可能性もある。
そのあたりの原因の切り分けは、今後のFTAで分析が進むことになるだろう。なお、これまでの2回の打ち上げ延期は高層風の強さが原因だったが、今回の打ち上げではその影響については「まず関係ない」とした。
今後、気になるのは3号機の打ち上げがいつになるかということ。ただ、これについては原因と対策の状況次第のところがあるため、現時点で予測することは難しい。初号機と2号機の打ち上げの間隔は約9カ月だったが、このときはロケット側に変更がなかった。もし設計変更が入ると、より長い期間が必要になる可能性もある。