三菱重工業は、常務執行役員の伊藤栄作氏が2025年4月1日付で新社長として就任する人事を発表。経営体制を刷新する。現社長の泉澤清次氏は4月以降、会長に就く。同グループの社長交代は2019年4月以来6年ぶり。12月18日に都内で開催された記者会見で、伊藤氏に宇宙分野や環境分野などへの今後の取り組み方について聞いた。

  • 握手を交わす伊藤栄作氏(左)と、泉澤清次氏(右)

ガスタービン研究開発など主力事業に携わってきた伊藤氏の挨拶

伊藤氏は1987年に三菱重工へ入社し、当時の高砂研究所(現・三菱重工 総合研究所)に配属。同社の主力事業でもある、ガスタービンを中心とした流体技術の研究開発を一貫して行ってきており、主力のG型やJ型の開発にも携わるなど、多くの成果をあげてきたという。

ビジネスネインテリジェンス&イノベーション部長として新分野・新製品のマーケティング・推進も担うとともに、総合研究所副所長、CTOとして多くの当社事業の開発、事業プロセス改善を推進。また研究者として、海外研究機関でのオープンイノベーションの展開を行ってきたほか、デジタルイノベーション本部を立ち上げ、デジタル化やAI化に対応するべくこれらの分野も牽引してきたとのこと。

泉澤氏は「伊藤氏は主力事業に対する深い洞察とともに、幅広い技術分野の見識を持っている。製品開発においても多くの課題解決を実施してきており、その粘り強さとリーダーシップについては上司だけでなく部下からも高く評価されている」としたうえで、「伸長事業の確実な遂行と、競争力強化分野での事業基盤強化、24事計での成長領域の事業化への取り組みを推進するには、伊藤氏の豊富な経験と実績がふさわしい」と、新社長への選出理由を説明した。

新社長に就任する伊藤氏は現在、常務執行役員 CTO(最高技術責任者) 兼 CoCSO(最高戦略責任者候補)の役職に就いている。挨拶の冒頭で伊藤氏は、「グローバルグループ経営の進化に加えて、長崎にあった香焼の造船ドックや工作機械をベストパートナーに譲渡するなど、経営構造を改良。火力事業の構造改革や、スペースジェット事業の立ち止まりなどを決断し、財務体質の改善に努めてきた。カーボンニュートラルなどの社会の変化に合わせて、(同社グループの生産活動におけるCO2排出量を2040年までにNet Zeroとする)MISSION NET ZEROを宣言し、成長戦略も推進している」と、宮永俊一現会長の社長時代から、泉澤社長にかけての12年間を振り返り、次のように続けた。

「こうした戦略が評価され、売上・事業利益はともに過去最高となっており、引き続きとても旺盛な受注がある。顧客に届けするための事業体制とバリューチェーンを構築することが喫緊の課題。このようなタイミングで社長を引き継ぐことは大変責任の重いことだ」(伊藤氏)

伊藤氏は「今後も引き続き改革を浸透させるとともに、多様な人材を育成し、デジタル技術を最大限活用することで、従来の三菱重工グループの枠にとらわれない新しい取り組みを行いたい」と述べ、挨拶を結んだ。

  • 記者会見で挨拶する伊藤栄作氏

宇宙や環境分野などにどう取り組む? 泉澤氏「伊藤氏は朴訥だがまっすぐな人物」

報道陣との質疑応答では、今後の事業・技術戦略への考え方について、伊藤氏に質問が集中した。

三菱重工はロケットによる打上げ輸送サービスをはじめ、宇宙開発に関わるさまざまな技術を保有。直近ではH-IIAロケット最終号機であり、温室効果ガス・水循環観測技術衛星「GOSAT-GW」を宇宙に運ぶ役目を担うH-IIA50号機や、準天頂衛星システム「みちびき」6号機を運ぶH3ロケット5号機の打上げを控えている。

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