昨今のインテリアECは、店舗展開の推進やBtoBへの参入、プロダクトを軸にした取り組み強化が進んでいる。さまざまな取り組みが進むのと同時に、各社の売れ筋アイテムの動向が異なる様子も目立つ。SNS訴求と並行して動画を活用した施策も進む。売れ筋商品が異なる背景には、毎年変わるトレンドや消費ニーズが関係しているようだ。各社の売れ筋商品やSNS訴求による効果などを取材しつつ、2025年の各社の戦略に追った。
<トレンドは短期化の傾向>
各社の売れ筋アイテムや売れた背景、SNSの実数値などを調査し、各社の動向をまとめた。
外部環境や消費トレンドの変化に伴い、今年の売れ筋に動きが見られた。
友安製作所では、2023年末から壁材の強化を図ったところ、売れ筋商品の上位を壁材が占めるようになった。壁材における「戦略商品の母数を増やそうと進めてきた」(友安製作所 友安啓則社長)と振り返る。
▲友安製作所「RIB:BO」
一方、トレンド商品の人気が短期間で収束する動向も捉えている。昨年はよく売れた商品が今年は上位に入らない。こうした変化を確実に捉えるプロダクト開発を仕掛けないと、売り上げに響くことがあるようだ。
ミサワも売れ筋の変化を実感している。「前年と比較するとカテゴリーを問わず、2024年に出した新商品が売れ筋になった」(ミサワ 担当者)と分析している。各商品カテゴリーでこの動きが見られるという。
フィルでは、ファブリック素材の壁紙「Hattan」の販売が順調だった。「Hattan」は、はがせるのが特徴で、従来品とは違ってゆっくり認知が広がったという。
今年はマスキングテープ感覚で貼ってはがせるシール壁紙「EASY WALL TAPE」の販売が上々だった。マスキングテープを使う手軽さが伝わりやすく、SNSなどで急速に広がったという。イメージのしやすさから「Hattanを上回ったと分析している」(フィル 担当者)と話している。
▲フィル マスキングテープ感覚で貼ってはがせるシール壁紙「EASY WALL TAPE」
カリモク家具は、昨年の販売状況と大きな違いはなかったが、商品選びの変化を捉えているようだ。「住宅事情によりマンションの平米数が小さくなったことで、ソファはサイズオーダーやコンパクトなサイズの展開でフィット感が選択肢になっている」(担当者)としている。
▲カリモク家具 「ZU46モデルのソファ」
<購入者による発信が好影響>
回答を得た2社のSNSの指標もまとめた。
SNSの関連数値が売り上げに直結しているわけではなく、「いいね」を押したユーザーと購入者が異なるケースがあるとの見方もある。
ただ、購入者や商品を求めるユーザーからのSNS発信は少なからず売り上げに影響はあるようだ。
インフルエンサーによる発信も売り上げには関係してくるが、近年は、依頼する形よりも、インフルエンサーが実際に気に入ったものを発信して認知が広がる流れが一般化している。企業が知る前に「いつの間にかバズっている」という現象はこの流れが目に付く。
ただ、フィルのように、マスキングテープを知っている層に「EASY WALL TAPE」がアプローチできたことでSNS上で急速に認知が進んだ事例もある。実際のコメント欄に実用性などに触れた内容が多いのは、商品を求める層にリーチできた一つの理由でもありそうだ。
また、友安製作所は現状で、売れたアイテムとSNS投稿に関連性はないと分析している。実際の購入者はSNS経由ではなく、単に商品を求めていたユーザーが検索して購入する流れになっている場合が多いとみる。
<流行と自社戦略をマッチ>
2025年はどんなインテリア用品が売れそうなのか。
自社オリジナルブランド「TEKKI CRAFT」を強化していく友安製作所は自社が売りたいものと、ユーザーの要望をマッチさせた展開を図るとしている。
フィルは、壁紙DIYに対するハードルをいかに下げられるかがポイントと見て、昭和レトロブームや環境問題に向き合う植物由来の壁紙の開発、自社ならではのデザインで攻勢を図るという。
カリモク家具は、サイズ性が重要であるとした上で、「数センチ、数ミリの単位でのオーダーメードや搬入時に分解可能なノックダウン構造など、提案力の高い商品などは今後ECでも売れる可能性が高い」(カリモク家具)と話す。
ミサワは、ソファカテゴリーで好調なペット対応生地の拡充を予定している。クッションカバーや自社オリジナル開発の照明などアイテムを強化していく考えだ。
トレンドと消費者のニーズを捉えつつも、自社の戦略や強みを時代の流れにどのように組み込んで訴求していけるかが鍵を握りそうだ。