野村証券が元社員の強殺未遂受け報酬返上、再発防止策を発表

「大切なご資産をお預かりしている金融機関としてあってはならないことであり、大変重く受け止めている。安心してお取引いただける金融機関になるためにできることの全てを実行していく」─こう話すのは野村ホールディングス社長、野村証券社長を兼務する奥田健太郎氏。

 野村HDは広島支店に所属していた元社員が、広島市の80代夫婦宅から現金約2600万円を奪い、放火した強殺未遂、現住建造物等放火の罪で起訴されたことを受けて再発防止策と社内処分を発表した。

 事件が起きたのは24年7月28日、野村証券が事態を認識したのは警察から放火の疑いで捜査されていることがわかった8月2日のことだった。

 元社員は広島市で個人・法人の資産管理のアドバイスを行う業務に従事、社内評価は目立つ点のない標準的なもの。208の顧客口座を管理していたが、顧客の被害は確認されていない。

 事実関係は不明だが、業務外で他人の資産運用をして損失を出し、その損を埋めるためにリスクの高い投資に手を出して失敗、その穴埋めのために80代夫婦を狙ったとも見られている。

 野村証券では業務改革推進委員会の設置、顧客訪問の監督強化、人事評価の見直し、指導や研修の充実といった再発防止策を打ち出した。ただ、今回の件が業務外のことが原因と見られる上、個人の犯罪に対して会社が責任を持てるのか? という問題を孕む。野村証券副社長の飯山俊康氏は「これまでも取り組んできたが、今後も不断に取り組むしかない」と話す。

 最近、三菱UFJ銀行行員による貸金庫からの顧客資産の窃盗、金融庁、東証、三井住友信託銀行でのインサイダー、大手損保4社によるカルテルなど、金融業界で不祥事が相次ぐ。倫理観の醸成を含めた社員教育を含め、金融の原点に立ち返った取り組みが求められる。