KDDIと京セラは12月16日、5Gの高度化と6G時代における高周波数帯活用に有効だと考えられるミリ波(28ギガヘルツ帯)通信エリアを効率的に拡張する無線中継技術を開発したことを発表した。
両社が実施した試験において、この技術を実装した中継器を東京都の西新宿ビル街に設置し展開した結果、既存のミリ波のカバー率と比較して道路のカバー率を33%から99%まで拡大できることを確認したという。両社は2025年3月31日まで試験を継続し、トラフィックの増加が見込まれる繁華街や駅、競技場などでのさらなる高速かつ安定した通信サービスの提供に向け、2025年度の実用化を目指すとしている。
開発技術の概要
今回開発した技術は、従来の無線中継技術で構成される受信機能(ドナー)と送信機能(サービス)の独立概念を一新。送受信機能を備え、無線環境に適応して動的に役割を切り替えるものだという。
これにより、ミリ波の基地局と連携しながら自律的かつ連続的なエリア形成が可能になる。同技術は高周波数化が進む6Gにおいても適用可能であり、高周波数帯の利用促進にも貢献するとのことだ。
同技術は受信したミリ波基地局の電波の中継網を中継器自体が自律的に形成し、ミリ波エリアを効率的に拡張する。中継器は相互に連携してメッシュ状につながりミリ波エリアを拡張可能とのことだ。中継器装置は電源供給だけで動作しバックホール回線も不要なため、設置が容易でオペレーションコストの削減も期待できる。今回、中継器の小型化と軽量化により街路灯などへの設置を可能としている。
中継器による自律的なエリア形成
従来の中継技術では、基地局から受信するアンテナをドナー面、増幅して送信するアンテナをサービス面として、役割を決める中継方法が一般的だった。そのため、エリアを構築する際は基地局に対して各アンテナの役割と指向方向を調整する必要があった。
一方で今回開発した中継器は、各アンテナがドナー面とサービス面の両機能を具備し、ミリ波基地局から受信したアンテナ面をドナー面として、その他アンテナをサービス面として動的に切り替え可能。ミリ波エリアの自律的なエリア形成と効率的なエリア拡張に寄与する。
この技術により、中継器同士が網目のようにつながり、メッシュ状にエリア構築が可能だという。従来の中継器では必要とされていたアンテナの役割と送受信方向の調整が不要となり、中継器の設置場所の自由度を高めるとともに、工事設計の簡略化を実現した。
中継ルートの最適化技術
新たに開発した中継器は、複数の方向から受信するミリ波電波のうち最も無線品質の良い中継ルートを選択し、メッシュ状のエリアを形成する。ミリ波基地局または隣接の中継器から受信する信号の劣化を検知した場合、適切な中継ルートを計算し切り替えを行う。建物の建設や樹木の成長といった環境変化により中継ルートが遮蔽された場合も、常に最適な中継ルートを自律的に選択し最適化するという。
中継器を小型軽量化
中継器は縦216ミリメートル、横216ミリメートル、高さ246ミリメートルで、重さ4.9キログラム。一般的なミリ波用の基地局に比べて大きさと重さを約7割削減。これにより設置性が向上しただけでなく、景観や環境への負荷も低減され、街路灯などへの設置を可能とした。