日銀による金融正常化路線の恩恵が地銀にも本格的に及び始めた。11月中旬に出揃った上場地銀73行・グループの2024年4―9月期連結決算は、7割超で最終損益が改善した。利上げを受けた貸出金利引き上げで資金利益が上振れたのが主因。設備投資や賃上げに伴う企業の資金需要も高まっており、地銀では「収益低迷の長いトンネルから抜け出せる」(中部地方の地銀首脳)と高揚感も漂う。
だが、監督官庁の金融庁は手放しで喜んでいるわけではない。目先の収益改善に目を奪われてリスク管理が甘くなり、融資が焦げ付く事態も想定して経営監視姿勢を強めている。
11月中旬、全国地方銀行協会で開かれた金融庁と加盟行との意見交換会。総合政策局幹部は「地域銀行における金融仲介機能の継続的な発揮に資するリスク管理上の論点」と題した文書を配布した。この中には、「ストレステスト」の実施体制の整備を求める内容も含まれていた。背景には、定期の立ち入り検査などで、営業部門の行き過ぎた融資を制御するリスク管理体制が十分に整備・機能していない事例が少なからず把握されたことがある。
ある監督局幹部は「『金利のある世界』が到来した中、地銀に求められているのは自らのリスクテイク能力の限界を把握した上で、企業再生の取り組みも含めた金融仲介機能を安定的に発揮していくことだ」と指摘。
同時に、金融庁は今回、改めて「持続可能性の確立」に向けて地銀各行との対話を深める方針も打ち出した。目先の収益は改善しても、中長期的に見れば、人口減少の加速で地銀を巡る経営環境が厳しさを増す状況に変わりはないからだ。
日本経済が縮む中で地域金融の持続可能性をいかに確保していくか。特に地域2番手以下の各行には「業績が落ち着いた今こそ、人口減少時代に対応した持続可能なビジネスモデルを探る好機だ」(監督局幹部)として、他行との再編も含めた生き残り戦略の明確化を迫る考えだ。