【著者に聞く】「ホワイトカラー消滅・私たちは働き方をどう変えるべきか」IGPIグループ会長・冨山和彦

30年にわたる日本経済停滞の原因は何か? どうすれば再生できるか? 学者の議論の多くは森を見て木を見ず、経営者の話は木の様子は良く見えているが、森全体を描けない感じだ。

 その一方で、我が国は明治維新以来の人口増加傾向がいよいよ減少期、それも生産年齢人口が先行減少する前代未聞の超人手不足時代に突入し、世界的にはAI(人工知能)革命によって人間の脳を代替・拡張する産業革命最終段階の予感だ。まさに大構造転換期。

 この際、私自身が実際に経営現場でいろいろなミクロを見てきた体験と、政策というマクロの世界にも広範に関わってきた経験を統合して、数字と事実と簡潔なロジックの新書を書くことにした。

「ホワイトカラー消滅」という刺激的な題名だが、日本の経済社会の過去、現在、未来にわたる長期的な構造変化と、その中で国、企業、個人がどのように前へ進んでいくべきか、に関する楽観的未来論の本である。

 まず長期停滞の真因、ある意味、私たちが選んできた「停滞なる安定」(≒デフレ的均衡)の歴史的実相。続いて、少子高齢化に起因する構造的人手不足時代の到来がその均衡を壊しつつあること、さらには、新たな均衡に向けて私たちは歴史的な大チャンスを迎えていることをマクロとミクロ、国と企業と個人、そして、東京と地方をすべて包括した議論として展開した。

 こうした歴史的な構造変化を縦糸とするなら、今後、衰退減少期に入る日本型ホワイトカラーサラリーマンな生き方、少し前まで多くの日本人が目指した「いい学校、いい会社、いい結婚」という標準家庭モデルの崩壊に際しての学び直し、リスキリングを横糸にして本書を編んだ。

 本書を少しでも多くの経営者、産官学のリーダー層、そして、何よりもホワイトカラー層とその予備軍(親御さんや教師も)に読んでもらい、それぞれのトランスフォーメーションを起動する契機となることを願っている。

久保利英明の「わたしの一冊」『組織ガバナンスのインテリジェンス ―ガバナンス立国を目指して―』