スペースワンが開発した小型固体ロケット「カイロス」。その2回目の打ち上げがいよいよ12月14日、スペースポート紀伊(和歌山・串本町)にて実施される予定だ。衝撃的だった初号機の打ち上げ直後の爆発から9カ月。同社としては、2号機で速やかにRTF(Return To Flight)を成功させ、小型衛星の商業打ち上げに弾みを付けたいところだ。

  • カイロスロケット2号機に搭載される衛星
    (C)スペースワン

カイロスは、固体の3段と液体のPBSという構成の小型ロケットである。高さは約18m、重量は約23トン。直径は胴体部が約1.4mで、フェアリングが約1.5mだ。国の基幹ロケットであるイプシロンをひと回り小型にしたようなロケットで、高度500kmの太陽同期軌道(SSO)に150kg、地球低軌道(LEO)に250kgの打ち上げ能力を持つ。

  • カイロスロケットの概要
    (C)スペースワン

しかし、政府の「短期打上型小型衛星」を搭載した初号機は、打ち上げの約5秒後に爆発、失敗していた。原因は、第1段の推力が予測よりも低く、速度が不足していたこと。カイロスは日本のロケットとして初めて、自律飛行安全システムを採用しているが、これが飛行計画とのズレを異常と検知し、自ら飛行を中断したというわけだ。

問題は、事前に推力を推定する部分にあったため、2号機ではそこを改善。ロケット本体側に問題はなかったとして、初号機から特に変更はないという。この点について、詳しくは前回の記事を参照して欲しい。

2号機では、5機の超小型衛星を運ぶ。最も大きいのは50kg級の「TATARA-1」、そのほかの4機は3Uサイズ(1Uは10cm角)のキューブサットとなる。50kg級衛星は、中央の非火工品小型衛星分離機構に搭載。4機のキューブサットは、その周囲の放出機構に格納される。このように複数衛星を搭載するのは、カイロスでは初だ。

  • 2号機には、50kg級衛星×1機と3Uキューブサット×4機を搭載する
    (C)スペースワン

  • テラスペースの「TATARA-1」が50kg級衛星。3Uの1機は公開されていない
    (C)スペースワン

打ち上げ時刻は、14日の11時ちょうどを予定。ウィンドウは11時20分までで、この範囲内であれば当日の天候や準備の状況により、打ち上げを遅らせることもできる。延期が可能な予備期間は12月27日までだ。

打ち上げの2分28秒後に第1段、4分40秒後に第2段、7分50秒後に第3段を分離し、高度500kmの太陽同期軌道に到達。53分35秒〜54分01秒にかけて、5機の衛星を順次分離する計画だ。なお分離の順番については、4機のキューブサットが先で、最後が50kg級。これに成功すれば、日本初の民間ロケットによる軌道投入となる。

  • カイロス2号機の打ち上げシーケンス
    (C)スペースワン

  • 飛行経路。太陽同期軌道に投入する
    (C)スペースワン

最後に、一般の見学情報についても触れておこう。今回も、公式の見学場は2カ所。串本町側が田原海水浴場、那智勝浦町側が旧浦神小学校だ。当日は国道42号の前後3kmの区間が駐停車禁止となっており、この公式見学場以外は、近くで見る場所はない。ロケット見学については、初号機でのレポート記事を参照して欲しい。

見学場で見るには有料の入場チケットが必要な点には注意して欲しいが、本記事の掲載時点(13日10時45分)ではまだ販売されているようなので、売り切れていなければ、もしかしたら買えるチャンスはあるかもしれない。ネットでのリアルタイム中継もあるので、現地に行けない人は、そちらで見ると良いだろう。

筆者は今回、打ち上げ2日前の12日に現地入り。温暖な印象がある南紀にしては気温はやや肌寒い感じだが、14日の天候は晴れの予報で、雨の心配はなさそうだ。

  • 13日7時過ぎに射場方向を撮影。この場所は打ち上げ当日には通行止めとなって入れない場所なのだが、ロケットは写真中央あたりから上昇していくはずだ

今後、マイナビニュースTECH+取材班(今回はなんと2人体制!)より、随時現地レポートをお届けする予定なので、続報をお待ちいただきたい。筆者は前回に引き続き、打ち上げ時には、公式見学場である旧浦神小学校にて取材し、前回は果たせなかった「校舎の後ろから上昇するロケット」を撮影したいと思っている。

  • 前回は「校舎の後ろで爆発するロケット」の画になってしまった……