サイボウズは11月7日・8日の2日間、幕張メッセ(千葉市)でプライベートイベント「Cybozu Days 2024」を開催。2日目には「サイボウズ Officeユーザー向けkintoneでDXセッション」と題したセッションが開催され、同社のエバンジェリスト渋谷雄大氏が登壇。同氏はサイボウズ Officeユーザーがノーコード開発ツール「kintone」を活用する上でのポイントを紹介した。
サイボウズ Officeとkintoneの違い
渋谷氏は冒頭、kintoneの特徴について、「自分たちの業務に合わせて、自分たちでアプリを作っていけること」と述べたあと、サイボウズ Officeとの違いについて触れた。
同氏によれば、サイボウズ Officeは、ITに慣れていないがシステム化はしていきたいと考える企業向けの製品で、スケジュールや掲示板、電話メモなど、欲しいと思う機能が入っている点を特徴としており、導入後すぐに使い始めることができる点がメリットだと説明した。一方、kintoneは、自分たちの業務に合わせて、自分たちでアプリを作っていける点がサイボウズ Officeとの大きな違いだとした。
「あらかじめ用意されているものと、自分たちでどんどん作っていけるものという点がサイボウズ Officeとkintoneの違いになります」(渋谷氏)
サイボウズ Officeにもカスタマーアプリを作れるサービスがあり、こちらはメニューで選びながら作っていくという操作感だが、kintoneは、使う画面を見ながらドラック&ドロップで配置しながら作っていけるというアプリの作成方法も異なる。
そのほか、拡張性にも大きな違いがあると同氏は指摘した。
「サイボウズ Officeは、基本的にサイボウズ Officeだけで使うサービスで、他のシステムと連携することはできません。しかし、kintoneは豊富な連携先があり、機能を足していける点がサイボウズ Officeとの大きな違いになります」(渋谷氏)
さらに対応言語も異なり、日本語のみ対応のサイボウズ Officeに比べ、kintoneは、日本語、英語、中国語、スペイン語に対応し、ユーザーによって言語を切り替えて使えるようになっている。
サイボウズ Office、kintone併用のメリット
では、サイボウズ Officeユーザーは、kintoneをどのように活用していけばいいのか。渋谷氏は、すべての機能をkintoneで実現するという方法もあるが、サイボウズ Officeのスケジュールや電話メモ、掲示板機能はそのまま使い、他の機能をkintoneで実現するのが王道パターンだと説明した。
「サイボウズ Officeのスケジュールはとても便利なので、スケジュールや電話メモの機能はサイボウズ Officeでそのまま使い、kintoneにあった方が便利だと思うものからカスタムアプリで作っていくことによって、うまく役割分担して使い分けることができます」(渋谷氏)
特にカスタムアプリの利用で多いのは、紙やExcelからの移行だという。
「kintoneはExcelをそのまま読み込んで移行できます。今あるデータをそのままkintoneに持ってきてしまえば、リアルタイムに最新の情報をみんなで見られる環境を作れるのです」(渋谷氏)
サイボウズ Officeとkintoneを一緒に使うメリットとしては、同じ会社のツールであるため、ユーザー情報がどちらにも反映される点があるという。また、画面も一緒なので、1回ログインすれば、kintoneとサイボウズ Officeを行き来しながら使っていくことが可能になっている。
「1つのユーザー管理画面で管理ができ、ユーザーによって使える、使えないが分けられます。最初はkintoneを営業部門の10人だけで使うといったこともできるので、サイボウズ Officeを全社員で使って、kintoneは営業部門だけという運用も実現できます」(渋谷氏)
また、kintoneの通知をサイボウズ Officeで受け取ることもできる。サイボウズ Officeを開くときにkintoneに連絡が来ているときは、サイボウズ Office側で確認しながらkintoneに飛んでいくこともできる。
kintone活用事例
同セミナーでは、kintoneを実際に活用している企業の事例もいくつか紹介された。
1社目は、和食染物店の京屋。同社では、営業が受注してデザインを作り、染色・縫製して製品が出来上がるが、これまでは、どの製品がどこまで進んで、どの部署のスケジュールがハードになっているかが見えていなかったという。
そこで、kintoneを使ってどの部署が現在どれだけ案件を持っているのか、どれだけリソースが余っているのかを「受注管理アプリ」を作成し可視化できるようにした。その結果、負担の大きくなっている部署を他部署が手伝うなどの協力体制が生まれたほか、受注可能かどうかの判断も柔軟にできるようになったという。
2社目はANYTIME FITNESSという24時間のジムを運営しているFast Fitness Japan。同社は契約書をkintoneで管理している。これまでは契約書の管理を紙で行っていたためバックオフィスの部分が煩雑になっていたが、現在は、kintoneにデータをアップすれば、全国の契約情報を一元管理できるようになった。押印の申請もkintoneで行っているという。
また同社は、「カンタンマップ」というプラグインを使って、契約者を地図上にマッピングしている。渋谷氏によれば、地図のマッピングは、自治体では空き家の管理に使ったり、不動産会社では空いている物件を可視化したりするなど、地図との連携が進んでいるという。
3社目は、BI(ビジネスインテリジェンス)向けの分析基盤整備を行うZEAL(ジール)。同社は、kintoneをSFA(営業支援システム)として利用している。
当初は別のツールを利用していたが、ライセンス費用の負担が大きく、社内の利用者を増やすことが難しい状況だったため、kintoneを導入した。kintoneでは、案件登録からPDFによる見積作成、発注書管理や受注登録までのフローを実装している。承認フローもkintone上で行っているという。また、帳表の連携サービスを活用し、PDFで帳表を出力している。
渋谷氏によれば、kintoneのSFAの連携先としては、SansanやEight Teamといった名刺データ、ラクスなどメール配信サービス、音声AI連携としての議事録や商談アシストなどがあるという。「こういった連携の幅というのがkintoneの強みです」(渋谷氏)
2025年1月にサイボウズ Officeとkintoneの新たな連携機能
セミナーの終盤には、サイボウズ Officeプロダクトマーケティングマネージャーの河合真知子氏が登壇。2025年1月にリリースする予定で、現在開発中のサイボウズ Officeとkintoneの連携機能を紹介した。
新たな連携機能では、サイボウズ Officeのスケジュールとkintoneの連携が可能になる。具体的には、サイボウズ Officeの予定にkintoneのデータを関連付ける、サイボウズ Officeの予定からkintoneの情報を確認する、kintoneからサイボウズ Officeの予定を登録するといったことができる。
新機能開発の背景には「サイボウズOfficeとkintoneを併用している企業は2000社ほどあるが、併用の満足度調査では、28.3%が満足していないと回答した」(河合氏)ことがあるという。
「具体的にどんなふうに満足できてないのか、どういうところが足りてないのかを深掘りしたところ、サイボウズ Officeとkintoneの連携が足りていないということに不満があることが分かりました。開発チーム、ビジネス側チームも、そこに課題があるというのは長年受け止めていました」(河合氏)
そして、セミナーの最後に渋谷氏は、「サイボウズ Officeとkintoneを併用すれば、業務改善やペーパーレスが実現できるようになります。DXの次のステップに進むための武器として活用いただければと思います」とアドバイスして、講演を終えた。