旭酒造は、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟内で、「人類初となる宇宙空間での酒造り」に挑戦すると12月10日に発表。2025年後半に材料を打ち上げて宇宙空間で発酵させ、地球に持ち帰って瓶詰め。「獺祭MOON – 宇宙醸造」 と名付け、1億円で販売予定だ。

  • 旭酒造、宇宙で獺祭を造る。三菱重工など協力、2025年後半打上げへ

旭酒造は、三菱重工業と愛知県(あいち産業科学技術総合センター)の協力の元、開発と打上げの準備を進めてきた。きぼうの活用については7月に、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のきぼう有償利用制度で承認済み。既に醸造装置の開発に取り組んでおり、2025年後半の打上げをめざしている。

  • 国際宇宙ステーション(ISS)(左)の一部を構成する「きぼう」日本実験棟(右)

きぼうに持ち込む材料は、酒米(山田錦)、麹、酵母。きぼうに設置されている細胞培養追加実験エリア(CBEF-L)の人工重力発生機へ醸造装置を設置し、月面の重力(地球の約1/6)を再現した環境下で醸造試験を実施。世界初となる、日本酒醸造特有の技術である「並行複発酵現象」を宇宙空間で確認予定とのこと。

実験手順としては、醸造装置内に材料を入れた状態で打上げ、軌道上で宇宙飛行士によって原材料と仕込み水を混ぜ合わせることで発酵をスタートさせる。その後、自動撹拌とアルコール濃度のモニタリングを行いながらもろみの完成をめざす。

  • 左は、CBEF-Lのターンテーブル部分(画像左下)が回転し、月の重力である1/6Gを再現する様子。右は醸造装置のイメージ

宇宙空間で発酵させた醪(もろみ)約520gは、冷凍状態で地球に持ち帰り、搾って清酒にしたあと、100mlをボトル1本に瓶詰めする(分析で必要な量を除く)。販売の詳細は別途改めてアナウンス予定としており、旭酒造では出荷額を全額、今後の日本の宇宙開発事業に寄付するとしている。

旭酒造は今回の取り組みについて、「2040年代に人類の月面への移住が実現する場合、長期間を月で暮らす中で、酒は生活に彩りを与える存在になる。水分を多く含むブドウと比べ、穀物である米は軽いため月まで輸送しやすい。将来的には米と、月にあるとされる水を使い、月面で獺祭を造りたい」とコメントしている。