「稼げるクルマがない」─。
日産自動車社長の内田誠氏はこう神妙な表情を浮かべる。 自動車業界の中で同社の業績不振が鮮明だ。24年4―9月期決算での営業利益は329億円。
前年同期比約9割減という状況だ。最大の要因は同社が主力市場と位置付ける北米、中国、日本の3地域で販売台数が大きく減っていること。
「かつての苦境とほぼ同じ経営を繰り返している」とアナリストは指摘する。1999年に日産が経営危機に陥った際、自社のクルマが売れず、値引きでシェアを重ねようとした分、収益性を落としたという構図だ。
「経営のゴタゴタで新車開発への投資が滞っていた」(関係者)ため、今でこそトヨタ自動車やホンダが北米で収益を上げているハイブリッド車(HV)の市場で出遅れた。いち早く電気自動車(EV)に注力したが、そのEV市場が急速に縮小。売れ筋のHVがない分、足元の利益減も在庫を減らすために販売奨励金を出して値引き販売し、台数を稼いでいるという状況。
業績悪化を受けて、日産は全社員の7%に当たる9000人の削減をはじめ、生産能力20%削減や固定費3000億円の削減などを進めていく方針。
前出のアナリストは「構造改革も必要だが、魅力的なクルマを開発・販売するという地に足のついた経営が求められる」と話す。
さらに日産の経営に影を落とす動きが表面化。旧村上ファンド出身者が設立したエフィッシモ・キャピタル・マネージメントが運営するファンドが上位株主に名を連ねたことが判明したからだ。9月末時点でエフィッシモが運営するファンドが日産の発行済み株式の2・5%を所有。エフィッシモは日産の子会社である日産車体の株式を30%近く保有しており、親子上場の解消を中心とした経営改革なども迫られそうだ。
さらに日産は「30万台レベル」(内田氏)で北米向け輸出のクルマをメキシコで生産。トランプ次期大統領による関税リスクもちらつくだけに、内田氏には社内外での重要な経営判断が求められるが、いずれにしても今の日産に必要なのは〝稼げるクルマ〟の開発になる。