「創業者・兼松房治郎が遺した創業主意『わが国の福利を増進するの分子を播種栽培す』を現代風に言うと『世のため、人のために行動する』。この価値観が社員の根底に流れているから、ここまで来ることができたのだと思うし、創業主意のDNAは今後も引き継いでいく」
1889年(明治22年)の創業から135年の節目を迎えた老舗商社・兼松。近年、大胆なグループ再編を進め、次の成長を狙う体制づくりを進めてきた。
昨年は兼松エレクトロニクスと兼松サステックの上場子会社2社を完全子会社化した他、昨秋には社長直轄組織「グループ成長戦略推進室」を設立。本社では各部門長の座席を同じ場所に集約して”ヨコ(部門間)”の連携を強化するなど、グループ一体経営を強化している。
「当社には130以上のグループ会社と約2万社の様々な顧客基盤がある。ここから得られる情報やネットワークは当社の財産であり、これをグループで最大化することで、新たな企業価値を生み出そうと考えている」
今期から新たな中期経営計画がスタート。成長投資として、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連へ約400億円、強みを有する事業分野へ約200億円を投じる。
今年4月には、グループ会社や長年の取引先と共同で、国内初のサイバーセキュリティ企業への投資に特化したファンドを設立。同社が海外で発掘し、投資を行った実績と知見を活かして、今後はセキュリティ企業の成長を支援し、日本のサイバーセキュリティ業界を盛り立てていく考えだ。
「先が読めず、変化の大きい時だからこそ、身軽に動くことができる商社にとってはチャンス。トレーディングビジネスで培ってきた商社の出番も今まで以上に増えると思うので、グループの強みを最大化することで、ソリューションプロバイダーへの進化を果たしたい」
座右の銘は「因果応報」と「一期一会」。人と人との”縁”を大切にし、仕事上でも、個人としても、人と人をつなぐことを信条とする経営者だ。