ベトナムで事業者向け食材Eコマースを展開するKAMEREO INTERNATIONAL PTE. LTD.は12月9日、住友商事、INSPiRE Mutualistic Symbiosis Fund 1投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、レアゾン・ホールディングスから、シリーズBラウンドにて12億円超の資金調達を実施した。調達した資金を活用し、ハノイ展開を始めとしたベトナム全国展開、マーケットプレースや自社輸入等の周辺事業への参入を進める。
KAMEREOは、ベトナムの事業者向けに、野菜等の生鮮食品を始めとした食材の卸売事業を運営するスタートアップ企業。生鮮食品に留まらず、冷凍食材、調味料、飲料、乳製品、消耗品等の2000を超える商品を取り扱っている。
特に野菜は、農地が集積するエリアに自社で野菜の集荷場を持ち、100を超える契約、および提携農家と協業。川上から川下までのサプライチェーンを一貫してコールドチェーンにて構築している。
また、社内エンジニアチームが、顧客が発注するモバイルアプリとWebサイト、倉庫ピッキング、配送管理システム、在庫管理システムを開発することで、コストの効率化とミスの軽減を実現している。ベトナムの食のサプライチェーンは、多重構造かつすべての事業者が小規模であるため、非効率性が極めて高い状況であるとし、KAMEREOは自前でより効率的なサプライチェーンを作り上げ、顧客に安価、安定、安心供給が提供できる体制を構築している。現在は、ベトナム南部のホーチミン市を中心に3000を超える事業者にサービスを提供している。
▲主な取引先企業
このほど、住友商事、INSPiRE Mutualistic Symbiosis Fund 1投資事業有限責任組合、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタル、レアゾン・ホールディングスから、シリーズBラウンドにて12億円超の資金調達を実施した。これにより累計調達金額は23億円超となった。
KAMEREOは、今回の資金調達により、ベトナム国内の複数都市展開、取り扱い商材の強化、自社輸入事業の開始、マーケットプレース事業を始めとした新サービスの展開、さらなるプロダクト機能開発を進めていくとし、「2021年5月に実施したシリーズAの資金調達以降、飲食店だけでなく、スーパーマーケットやコンビニ、工場、学校、病院など、お客様層の幅も広がり、取り扱い商材も大幅に拡充し、よりお客様のニーズにワンストップで対応できる体制を整えてきました。日本では既に食材卸や野菜のサプライチェーンについては大手卸会社や農協のようなメガプレイヤーが存在していますが、ベトナムではどちらも存在せず、極めて多くの個人商店のみで市場が成り立っています。15兆円超の巨大市場が年率5%以上で伸びていき、明確な大手企業や勝ち組企業がいないなか、やるべき事を1つずつ積み上げていき、ベトナムにおける最大の食品流通企業になることを目指します」とコメントした。
2024年12月には、南部のホーチミンに加えて北部のハノイへの事業参入を果たし、ベトナムのGDPの50%超を占める2大都市をカバーする体制が整った。ベトナムの南部と北部を繋ぎ毎日冷蔵配送する体制も整えており、将来的には北部と南部の間の中部各都市への営業配送体制も整える予定だ。直近では、ホーチミンやハノイ以外の都市の顧客からの購買希望も多く、速やかにベトナム全土をカバー可能な体制を整えていくとしている。
きめ細かいラストマイル配送網、3温度帯の倉庫機能、ウェブサイトトラフィック、3000を超える顧客ネットワーク等の自社インフラを活かす形で、マーケットプレース事業の強化も推進する。この事業は、従来の自社で在庫を持つ方式と異なり、KAMEREOの倉庫に生産者や製造会社の在庫を置いてもらい、KAMEREOが営業、配送、資金回収を実施する。
KAMEREOのマーケットプレースに商品を載せることで、今までアクセスするのが困難だったHORECA(飲食店やホテル等)向けに、初期投資やオペレーションの構築なしで販売を開始できる。第1号プロジェクトとして、「業務スーパー」事業を運営する神戸物産と包括事業提携を結び、約450商品の「業務スーパー」商品がKAMEREOで購入可能となった。顧客からも好評を頂いており、今後もマーケットプレース事業におけるパートナー企業の拡充を図る。
さらにKAMEREOでは、プライベートブランドの開発を昨年より強化しており、今回の調達資金の一部をプライベートブランドのさらなる開発に充当するとしている。プライベートブランドの方針として、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けカット野菜やカットフルーツの開発および販売強化、ブランド認知向上と価格競争力強化を目的とした消耗品類のプライベートブランド化を推進する。
▲スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けにカット野菜やカットフルーツのプライベートブランドを開発
ベトナムの都市部では、急速に昔ながらの伝統市場文化からモダントレード化が進んでおり、この不可逆的変化の波に適切なタイミングで新商品をリリースする。ますます高まる食の安全性、トレーサビリティ、健康志向という長期トレンドに合わせた商品の開発・投入を予定している。
▲消耗品類のプライベートブランドも展開
また、ベトナムでは多くの工場が海外向けOEM工場として稼働しており、それらの工場の稼働率の低いタイミングで大量発注することで、安価で高品質な自社プライベート商品の製造が可能になるとし、品質を維持、または向上しながら、コスト削減、販売価格低減を同時に実現できるとした。
【引き受け先コメント】
・住友商事 執行役員 リテイルSBU長 竹野浩樹氏
KAMEREO社は、レストランやカフェはじめ飲食ビジネスにかかわるみなさまのニーズや課題に向き合い、きめ細かい改善を重ねて多くの支持を得ることで、ベトナム食品流通事業の発展に貢献しています。本ラウンド後当社がハノイで運営する小売事業フジマートと連携することで、KAMEREO社の業容拡大を支援するとともに、新しいサービスを通じて、さらに多くのお客さまに高品質で安心安全な食品の提供をサポートしてまいります。
・インスパイア・インベストメント 取締役 藤本学氏
弊社は過去10年以上にわたり、ASEANを中心とした日本企業の海外展開を支援してまいりました。単なる出資や輸出促進にとどまらず、戦略的な合弁会社の共同設立など、海外成長戦略の実現に寄り添った取り組みを行っています。ASEANにおける重要な成長市場の1つであるベトナムでは、KAMEREO社が構築してきた垂直統合型サプライチェーンが、顧客および市場に寄り添いながら、事業拡大に欠かせない相利共生的な価値を提供していると考えています。このたびの出資を契機に、弊社ファンド支援先との横断的事業連携の機会を創出し、シナジー効果を活かした事業価値の向上に努めてまいります。
・SMBCベンチャーキャピタル 投資営業第4部 副部長 竹内基紘氏
KAMEREO社は「カイゼン」をコアバリューの第1に掲げる日本人経営者ならではの組織文化により、地道な営業活動とオペレーション改善を積み上げ、顧客を獲得すればするほど仕入条件が改善してより顧客を獲得しやすくなる成長の好循環に入っています。ベトナムにおける有望な日本人起業家の1人で、日本発グローバルで活躍する起業家のロールモデルとなりうるべき人物でもある田中CEO率いるKAMEREO社を今回の投資を通じてご支援できることは喜ばしい限りです。私共も「食品産業を再定義する」というビジョンの実現に向けてグループのネットワークも活かして様々なご支援をしてまいりたいと思います。
・三菱UFJキャピタル 投資第二部 次長 後藤大暁氏
2023年に人口1億人を突破し、経済成長が進む一方で食品流通網には効率化の余地がある”ベトナムのマーケットポテンシャル”、価格・品質・納期の安定した流通を実現するため、サプライチェーンの川上から川下までを垂直統合型で手がける難易度の高いオペレーションを構築しながら事業を成長させてきた”KAMEREO社の将来性”、コロナ禍等の困難を乗り越えながら異国の地で事業を率いてきた”バイタリティ溢れる田中CEO”に期待し、この度出資の機会をいただきました。今後はMUFGの東南アジアネットワークも活用しながら、KAMEREO社の挑戦をご支援いたします。