「テクノロジーの激変により、20世紀まで人類が築き上げてきた概念やビジネスモデル、あらゆる仕組みが今、スクラッチから再定義されつつある」。Google日本法人 元代表取締役社長で現在アレックス 代表取締役社長 兼 CEOを務める辻野晃一郎氏は、現代をそう表現する。デジタル後進国とも呼ばれる日本において、多くの企業がDXに取り組みながらも、期待された成果を上げられていない。その理由は、果たしてどこにあるのか。

11月26日~27日に開催されたウェビナー「ビジネス・フォーラム事務局×TECH+ EXPO 2024 Nov. for Leaders DX FRONTLINE いま何を変革するのか」において同氏が、DXが進まない本質的な理由と、ChatGPTに代表される生成AI時代における企業変革の方向性について、具体的な示唆を提示した。

激変する時代における企業変革の必要性

辻野氏は講演の冒頭で、現代がVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代にあることを指摘。「新型コロナウイルスの突発的な流行、戦争の勃発、日米における政治的混乱など、先行きが極めて不透明な時代に我々は生きている」と述べ、その背景には急激なテクノロジーの進展があると分析した。

この変化を象徴する例として、同氏は米テスラの事例を挙げた。テスラは単なるEV(電気自動車)メーカーではなく、SDV(Software Defined Vehicle)として、クラウド連携やAIによる自動運転を核とする新しい移動体を創造している。また、イーロン・マスク氏によるスターリンクを通じた全世界的な通信網の構築や、ニューラリンクでの、FDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)から認可を受けた脳へのチップ埋め込み技術の開発など、テクノロジーによる社会変革が進んでいる。

なぜ日本企業ではDXが進まないのか

しかし、こうしたテクノロジーによる急速な変化が認識される一方で、多くの日本企業ではDXの取り組みが必ずしも期待された成果を上げていない。辻野氏は、その背景には経営層の意識と組織体制に関する本質的な課題がいくつか存在すると指摘する。

1. 経営トップの関与不足と「丸投げ」の問題

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