帝国ホテル、全国の逸品を販売するECモール開設の狙いは 事業の多角化で顧客をより深く知る

帝国ホテルは今年11月、日本各地の逸品を販売するECプラットフォーム「ANoTHER IMPERIAL HOTEL(アナザーインペリアルホテル)」を開設した。東京に構えるホテルの建て替え工事を控えている今、事業を多角化したい考えだ。

内幸町一丁目街区の開発プロジェクト「TOKYO CROSS PARK構想(トウキョウクロスパーク)」とのパートナーシップにより、タワー館の建て替え工事が24年度中に、本館の建て替え工事は31年度に始まる計画だ。工事により営業が制限される中で、新たに開設したECプラットフォームを通して、顧客との接点を増やしていきたいという。

▲ANoTHER IMPERIAL HOTELの人気商品、老舗和菓子店「空也(くうや)」とコラボした「和洋折衷MONAKA」

▲特製の粒あんをのせて食べる、新しいスタイルのスイーツ

<リアルとオンラインの顧客IDを統合、デジタルマーケを強化>

さらにこれまで蓄積した顧客の情報を、より深く解析し、デジタルマーケティングの再整備や強化する狙いもあるという。

同社は以前から、今回開設したECプラットフォ―ムとは別で、自社の商品を販売するECサイトを運営してきた。今年10月に、既存のECサイトとホテル会員、さらに新設したECプラットフォーム、それぞれの顧客IDを統合した。より一層、パーソナルなニーズに合った情報を届けたい考えだ。

「お客さまの食の嗜好(しこう)やお誕生日、結婚記念日などは把握しているが、新たなプラットフォームを展開することで、お客さまの情報をより大きな枠で、より深く知ることができるのではないかと思っている。サイトにおけるマーケティングだけでなく、ホテルでのサービスにも生かせる」(総支配人室 次長 兼 広報課長 山田純平氏)と話す。

<「私利を追わず公利を得る」渋沢栄一のマインドを継承>

現在、37ブランドの約100種類の商品を取り扱っている。

EC事業部の平石里奈課長は「出品していただく企業や商品をはじめ、既にその商品のファンの方など、このプラットフォームに関係する人が増えて、顧客が拡充する。帝国ホテルと各出品企業、それぞれに間口が広がることに大きな可能性を感じている」と話す。

▲老舗和紙舗「榛原(はいばら)」の蛇腹便せん

▲蛇腹になっているので手紙の長さに合わせて使える

コロナ禍には帝国ホテルの商品を販売する既存のECサイトが好調に推移したものの、顧客の幅が広がらないという課題があった。顧客の幅を広げたり接点を増やすという点においては、他社のものを取り入れ、価値の相乗効果を求めることが重要だという。

「帝国ホテルの初代会長・渋沢栄一は『私利を追わず公利を得る』という考え方で、数多の事業を起こした。私たちも渋沢のDNAを引き継ぎ、周りの皆さんとともに発展していくのが本来あるべき姿だと思っている。関係者やお客さまとウィンウィンな関係であれるように、ビジネスを成り立たせていく。今回、新設したプラットフォームの運営に力を入れることは、日本の元気につながると信じている」(同)と新事業への思いを語った。

新たなECプラットフォームのターゲットは、主に30~40代としている。今後もターゲットに刺さる商品を厳選しながらラインアップを増やしていく計画だ。