皆さまこんにちは、地球深部探査船「ちきゅう」に乗船中の科学コミュニケーター三浦です。

 毎日が刺激的で乗船してからあっという間に1週間が経過しました。11月23日(土)、24日(日)には船上と日本科学未来館を繋いだ中継イベントを開催しました! ご来館いただいたみなさん、ご覧いただいたみなさん、ありがとうございました。

 中継イベントでこんな質問をいただきました。「ちきゅうに乗船するために、何か資格は必要ですか?」。資格は必要ありませんが、乗船する前にはヘリコプター水中脱出訓練を受けなくてはいけません。「ちきゅう」へはへリコプターで向かい、万が一何かあった場合に備える必要があるためです。

 今回は、乗船するときの様子をお伝えします!

震災遺構 荒浜小学校へ

 さて、11月15日(金)に乗船する予定だったのですが、悪天候のため乗船のためのヘリコプターが飛ばず、1日延期になりました。こうした延期はよくあることだそうです。ということで、15日は一緒に乗船予定だったメンバーと震災遺構を見に行くことになりました。

左からDick Peterse(カメラマン、オランダ)、Patrick Fulton(JTRACK共同主席研究者、アメリカ・コーネル大学)、Maya Pincus(アウトリーチオフィサー、アメリカ)、Dan Brinkhuis(Science Media、オランダ)。地下鉄で移動する様子。

 私たちが訪れたのは、仙台市若林区の「震災遺構 仙台市立荒浜小学校」です。4階建ての校舎ですが、2階まで津波が押し寄せ大きな被害を受けた施設です。津波によって金属製の手すりがねじまがっており、津波の力がどれほど強いものなのかを物語っています。

壊れた手すりをじっと見つめるメンバー。

 4人とも震災遺構を訪れるのは今回が初めてだったそう。一つひとつの展示をじっくりと見ていました。メンバーの1人のDanが「この姿が科学調査をする意義の一つだ」とポツリとつぶやいていたのを覚えています。私は以前宮城県に住んでいたので、何度も荒浜小学校を訪れていますが、ここに来るたびに防災や減災について考えさせられます。

 今回の「ちきゅう」の航海の目的の1つが、東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の震源断層を調査することです。乗船する前に、メンバーで震災について改めて考えられたことで、プロジェクトにかける想いもより強くなったように感じました。

校舎1階の様子。天井がボロボロになっていたり、天井の柱のすき間に、空き缶が入り込んだりしています。メンバーたちは写真を撮ったり、リポートをしたりしていました。

人生初のヘリコプター! 「ちきゅう」に乗船しました!

 11月16日(土)は一転天気に恵まれ、ヘリコプターが飛べるとのこと! 救命胴衣や防音ヘッドフォンを装着し、ヘリコプターに搭乗しました。

 ローターやエンジンの音が大きくなったと思ったら、機体がふわっと浮き上がり、離陸しました! どんどんと高度を上げていきます。離陸から数分後、あっという間に街並みが小さくなり、陸地全体が俯瞰して見えるほどの高さにまで上昇しました。左右に機体が曲がる時の傾きや振動などが飛行機よりもダイレクトに伝わり、身体全体に響いてきます。雲の少し下のあたりを飛んでいて、窓から手を伸ばすと、雲がつかめそうでした。まるで鳥になった気分です。

 離陸から1時間ほど経ったころ、視線の先に小さな小さな「ちきゅう」が見えてきました。奥の水平線を見ると、太陽の光が雲のすき間から差し込んでいて、その景色を背景に眺める「ちきゅう」はとても綺麗でした。

朝の9時半ごろヘリコプターから「ちきゅう」を眺めた様子。水面がキラキラと輝いていてとても綺麗です。この景色、一生忘れないと思います。
協力:朝日航洋株式会社

乗船するために降下していくと、小さく見えた船がどれだけ大きいのか実感できます。非常に迫力がありました。

ヘリコプターから見た「ちきゅう」の景色。中心部に位置する青色の掘削やぐらや、奥のパイプラックが見えます。
協力:朝日航洋株式会社

 「ちきゅう」船首側にあるヘリデッキに着陸し…無事、地球深部探査船「ちきゅう」に乗船することができました!

宮城沖200km、地図で見ると近いように感じていましたが、いざ乗船して見るとあたり一面海しかなく、陸地は一切見えません。水平線は360度全て空と海の境界線で、わずかに弧を描いています。そしてとにかく、空が広いです。自然の広大さを実感することができました。

ヘリデッキから撮影した掘削やぐら(デリック)の様子。水平線が弧を描いているのがわかりますね。撮影:Dick Peterse

 次回は「ちきゅう」船内の様子、船員のみなさんがどう過ごしているのかをご紹介したいと思います!

(執筆日時:2024年11月24日(日))

関連URL

  • 震災遺構 仙台市立荒浜小学校 https://arahama.sendai311-memorial.jp/
  • JTRACK公式サイト https://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/exp405/index.html


Author
執筆: 三浦 菜摘(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
アクティビティの企画全般に携わり、展示解説や発信活動を実施。地球科学の最前線を紹介する企画展(Mirai can NOW第7弾「地震のほしをさぐる」)等を担当。

【プロフィル】
自然に囲まれた幼少期を過ごし、植物や生き物が大好きに。大学では植物の化石を研究していました。以前は宮城県の放送局でアナウンサーとして、科学トピックの特集などを担当していました。
科学を多くの人と楽しめる場をつくりたいと思い、未来館へ。

【分野・キーワード】
古植物、植物生態学