物語運輸は、日本各地の名品を海外向けに販売する越境ECサイト「ナラティブ・プラットフォーム」を運営している。3期目となる2025年8月期には年商1億円を目指しているという。日本の商品をいかに海外向けにプロデュースできるか、インバウンドの需要を取り込めるかが鍵になるとしている。
中国人・韓国人の観光客は、土産として白物家電を購入することが多い。一方、欧米からの観光客はレストランやホテルには予算を割くものの、土産としては低単価な菓子や食品など、帰国後にも楽しめるものを購入する傾向があるという。
「母国に帰ったあとも安心・安全に使える、海外の生活様式に合った食器や生活用品をプロデュースして、ラインアップを拡充する。宿泊先のホテルやレストラン以外にも、インバウンドのお客さまの空港までの動線の中にタッチポイントを作り、まずは商品を知ってもらう、持って帰ってもらうことを目指したい」(五十嵐代表)と話す。
▲ナラティブ・プラットフォームの事業モデル
質が高く、魅力的な商品であっても海外の生活様式には合っていないことが多いという。同社は商品の発掘から、海外向けにプロデュースして販売するまで、一気通貫して請け負う。さらに動画制作や翻訳、配送も内製しているので、職人や企業は低リスクで海外市場に進出できる。
<日本の「原石」が少しでも早く海外で認められるために>
サイト上には、すべての商品に3分以内のPR動画を掲載している。動画では製造工程の様子を見せたり、職人自ら商品の魅力を語ったりしている。
「製品を作り、展示会に出品してから売る流れだと、リードタイムがかかる。動画を見て『欲しい』と思ってもらえれば、職人は受注生産ができる」(同)と話す。
▲豊富な写真と動画で商品の魅力を伝えている
プロデュースした商品を海外のクラウドファンディングに出品し、そこで売れた実績をもとに自社ECに掲載しているという。
「プロデュースして終わりではなく、しっかり売るところまでやっている。既に1カ月間で数百万円売れている商品もある。今は月に3~4のプロジェクトを並行して進めている」(同)と話す。
現在、代表自ら毎週のように地方に出向いているという。
「ものづくりに真摯に向き合う職人や、伝統技術を生かした商品など、地方には本当に『原石』があると感じている。国内市場でしか販売できていないことは問題だと思う。商品の価値をきちんと伝えられれば、海外向けに、今より強気な価格でも手に取ってもらえる」(同)と語った。
商品の購入をきっかけに、生産者のいる地域に興味を持ったり、実際に観光に行ったりする人が増え、地方創生や職人の地位向上にもつなげたい考えだ。
今後も厳選しながらラインアップを拡充し、1年後には50商品をプロデュースしたいとしている。資金調達も積極的に行う計画だ。