クルーズは11月18日、2024年4‐9月期(中間期)の決算説明会を開催し、新たに「ITアウトソーシング事業」をメインに据える戦略転換を発表した。「2025年3月期でグループ連結での売上高の減少は底打ちし、高成長企業に生まれ変わる」(小渕宏二社長)と話す。
EC事業ではファッションECモール「SHOPLIST」の減少傾向は続くが、新規事業のファッションセレクトEC「Ada.(エイダ)」が急成長を遂げており、「SHOPLIST」の減収をカバーしている。
<大胆な事業転換を発表>
クルーズはこれまで「SHOPLIST」をファッションEC分野で代表するブランドに成長させるとともに、新規事業を次々と立ち上げ、100人の経営者がそれぞれ100億円の事業を創出し、グループで1兆円の売り上げを達成することを目標に掲げていた。
ただ、主力事業の「SHOPLIST」事業は2021年3月期をピークに減収が続いており、ゲーム事業やメディア事業なども思うような成長を遂げられていなかった。
そこで同社は事業転換に向けた準備を進めていた。
小渕社長は、「複数の重点戦略を追うのを止めて、メイン事業をITアウトソーシング事業に絞る。ITアウトソーシング事業はすでに展開しており、爆発的に成長している」と発表した。
稲垣佑介副社長は、「ITアウトソーシング事業とは、IT人材業界におけるエンジニア人材の不足という至上課題を解決するシステムエンジニアリング事業で、SES事業と言われている。人材×IT領域を中心に事業展開を行っていく」と説明する。
<ITアウトソーシング事業は急成長>
クルーズの2024年4‐9月期(中間期)の連結業績は、売上高が前年同期比0.9%増の70億1100万円、営業損益が8億5400万円の営業損失(前年同期は5億4600万円の営業利益)、経常損益は6億7000万円の経常損失(同15億100万円の経常利益)、純損益が3億6300万円の純損失(同10億7000万円の純利益)だった。
2024年7‐9月期(純第2四半期)における連結売上高は前年同期比1.3%増の34億6800万円だった。メイン事業に据えるITアウトソーシング事業の売上高は同54.0%増の10億6300万円になった。同事業の営業損益は1000万円の営業損失となっているが、単月では黒字化しているという。
2024年3月期におけるITアウトソーシング事業の売上高は、前期比65.7%増の30億5200万円だった。事業開始から年平均成長率は約69%となっており、中期計画では2028年3月期に同事業の売上高を130億円にまで拡大するという。
▲ITアウトソーシング事業の売上高の推移と目標
小渕社長は、「上場銘柄として低PBRや株価の低迷について、いろいろご指摘いただいた。今回発表したITアウトソーシング事業は今までの事業の中では不確実性の少ない事業だ。その事業を中心として高成長の会社に生まれ変わる」と展望を話す。
<ファッションセレクトEC「Ada.」は単月売上4億円突破>
EC事業においてもV字回復の布石を打っていた。
小渕社長は、「SHOPLIST事業の減収に対応したロケットにもすでに着火している。その新規事業は『Ada.』だ」と説明した。
▲「Ada.」のスマホトップページ
「Ada.」は2023年4月から開始したファッションセレクトショップだ。主に「ZOZOTOWN」で、オリジナル商品と他社優良ブランドの商品を厳選して販売しているという。
純第2四半期のEC事業の売上高は前年同期比8.9%増の18億3600万円だった。急成長の「Ada.」が「SHOPLIST」の減収分をカバーし、増収となっている。
稲垣副社長は、「1年半前くらいから『Ada.』事業を開始し、開始から8カ月で単月の取扱高は1億円に達した。そこから12カ月目で2億円、16カ月で4億円を突破している。月間平均成長率42.5%とハイペースで成長している。2024年3月期の売上高は11億2600万円となった。すばらしい立ち上がりを見せており、『SHOPLIST』の減収分をカバーしている」と話す。
▲「Ada.」単月売上高の推移
小渕社長は、「単月4億円の取扱高になったということは、12カ月だと50億円の規模になる。新規事業としては恐ろしいくらいのスピードで成長している」と話す。
▲「Ada.」は「SHOPLIST」の1割強の商品型数で7割強の取扱高に
クルーズは「SHOPLIST」の低迷を「Ada.」でカバーし、さらにメイン事業となるITアウトソーシング事業の成長を加速することで、V字回復を達成し、新たな成長路線に進む見通しだという。