人手不足は、過去10年、20年経った今でも叫ばれ続けている課題である。ただ、これからの企業経営で課題先送りは、事業存続を不可能にする。ビジネスをデジタル前提に刷新し、機械化による効率化を図ることは、当然必要になるが、仲間づくりをしていくことも重要な要素となる。
コロナ後、旅行需要の回復や円安を受けて、日本に何度も訪れるインバウンド客が増えている。1度目は有名な観光地を回り、2回目以降は、王道ではない違った景色や経験をしたくなる。アンケート調査から見えてくるのは、コト消費の拡大である。
次回以降やりたい項目には「日本食を食べること」「温泉入浴」などの体験型が並ぶ。
インバウンド客が地方に長期滞在することが当たり前になり、長期滞在で散策、山登り、ゴルフ、釣り、自転車、田植え、ブドウ狩りなど様々なレジャーを楽しむようになっている。
訪日客としては、滞在する街でこれらすべてを経験できれば理想だが、町にある1社だけではニーズ全ては満たせない。できないことが分かれば、町に訪日客は来ないし、客が来なければ、売上や利益が立つこともない。人がいればできることも、これからできなくなっていく。
デフレ下の世界、企業はコストカットにより、何とか生き残りを果たしてきた。上記の例を挙げれば、レンタル自転車屋が町に数軒あれば、ディスカウント競争が起こる。顧客からすれば、レンタル費用が高ければ、釣りに変えることも選択肢になる。デフレのもとでは、同じ時間を顧客から奪う、他のサービスも競争相手であった。
しかし、これだけインバウンド客が増えて、インフレが進み、人手不足が顕在化した現状においては、地域の企業が協力し、何とか顧客のニーズに応えて、売上を稼ぎ出していくことが必要である。顧客が求めるものは1つだけではない。
技術的には、訪日客のニーズを把握し、企業にフィードバックしていくためのデジタル技術を導入することが有用である。地方で遅れているデジタルを、こうした領域でも活かすことができれば、もっと地方は甦る。仲間ができれば、自転車で釣りに行って、帰りにブドウ狩りや温泉を楽しむといったプランも実現できる。
そうした魅力を作るからこそ、価値に見合った価格設定ができる。リピーターを増やして、地域に人の流れを作り出すことができるのである。
残された課題は、30年間の景気低迷やデフレの中で、商売敵となってしまった人たちと、どうやって仲間になるかである。
地方の衰退は進んでいる。祭りや花火はどんどん数を減らしている。2009年に約6500件開催されていた花火大会が、21年には約4000件になった。
仲間、コミュニティ、イベントの復活が、地域創生の試金石である。