日本トリムと東京大学(東大)は11月28日、水素発生反応を促進する白金(Pt)の触媒効果を維持しながらその担持量を減らす手法として、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)から構成されたナノファブリックをPtで覆うことで、Ptの担持量を10μg/cm2以下にまで減らすことに成功したことを明らかにした。
またこのナノファブリック型Pt電極触媒を用いて水素反応を行ったところ、Pt触媒のエッジサイドは水素原子の生成に寄与することを突き止めたと併せて発表した。
同成果は、東大 未来ビジョン研究センターの坂田一郎副センター長(東大 工学系研究科 教授兼任)、同・古月文志特任教授(研究当時)、日本トリムの樺山繁氏(神戸大学大学院 科学技術イノベーション研究科 客員教授兼任)らの共同研究チームによるもの。研究の詳細は、英国王立化学会が刊行する材料化学全般を扱う学術誌「Journal of Materials Chemistry A」に掲載された。
Ptは、水素八正反応を促進する模範的な電極触媒として知られているが、高価であるため、その高い触媒効果は維持したまま担持量をいかに減らすことができるかを追求する研究が行われている。
今回の研究では、SWCNTから構成されたナノファブリックをPtで覆う新手法が開発された。このナノファブリック型Pt電極触媒は、同じ量の水素を発生するのに、従来型の粒子状Pt/C電極触媒に比べ、面積あたりのPt量を約150分の1にまで減らすことができたという。
また研究チームによると、SWCNTを覆う3種類のPt結晶からなるエッジサイドから電子が放出され、その電子が電気二重層中の水和水素イオンと結合することで、水分子と水素原子が生成されるとのこと。その水素原子はエッジサイドにトラップされ、トラップされている水素原子が過剰になると、2個の水素原子が結合し水素分子(H2)として水中に放出されるとする。