昆虫食の製造・ECなどを展開していたグリラスは11月7日、徳島地方裁判所に破産手続きを申し立てた。東京商工リサーチによると、申立時点の負債総額は1億5339万円だったという。
同社は2019年に設立。2020年には無印良品へコオロギパウダーの提供を開始した。コオロギせんべいがヒットするなど、一時は好調だったが、2023年にSNSを中心に、昆虫食が炎上して以降、事業は縮小の一途をたどっていた。
<資金不足で変化への対応できずか>
SNSを中心に炎上したきっかけとなったのは、同社が提供したコオロギ粉末を使用した給食が、徳島県内の高校で、提供されたというニュースが報じられたことだった。高校で希望者のみに提供しただけだったが、SNSでは、「子どものトラウマになったらどうする」「政府との癒着」といった、バッシングの投稿が相次いだ。
この件はネットニュースやテレビなどにも取り上げられた。詳細を把握していないコメンテーターなどが批判するケースも少なからずあったようだ。
2023年秋までグリラスで広報を務めていたA氏は、この時期に多数寄せられた苦情・批判の声に戸惑ったという。
「徳島県内はもちろん、四国からの苦情はほとんどなく、ほとんどが関東や関西からのものだった。グリラスの顧客でもない、無関係な人からの苦情がほとんどだった」(A氏)と話す。
ピーク時に約30人いた社員は、A氏が退職した2023年秋には20人ほどになっていたという。
「最後まで残ったのは4~5人だったと聞いている。炎上をきっかけに、計画していた案件が次々と中止になったのは事実。だが、それまでの投資のペースが早かったこともあり、炎上が始まった段階で資金不足が続いていた。そのため、炎上による環境変化に適切に対応しきれなかったという側面もあったようだ」(同)とも話していた。
<競合から不満の声も>
結果的に、昆虫食全体の炎上の原因を作ってしまった形となったグリラスだが、デマへの対応などはほとんど行っていなかったようだ。昆虫食のECなどを展開するX社の経営者のB氏は、この点に不満を感じていたという。
「当時は昆虫食のネガティブ報道ばかりだった。昆虫食をたたけば、『いいね』やページビューが増え、広告収入が増えるといった状況だったのだろう。だが、グリラスからは何も発信はなかったのが残念だった」(B氏)と当時を振り返った。