三菱電機は11月27日、準天頂衛星システム「みちびき」6号機の完成機体を、同社鎌倉製作所で報道関係者に公開した。「H3」ロケットで2024年度中に打上げられる予定。今後、2025年度に打上げを予定している5・7号機を加えた7機体制で、GPSなど他国のシステムに依らない持続測位サービスの実現をめざす。
「みちびき」は、日本とアジア・オセアニア地域に特化した、日本政府が保有・運用する衛星測位システム(Regional NSS)。2018年11月から、準天頂軌道を周回する3機と、静止軌道を回る1機の計4機体制で、測位・時刻(PNT)と災害・危機管理メッセージのサービスを提供している。
衛星測位システムは「位置と時刻を提供する情報インフラ」であり、我々の日常生活に欠かせないスマートフォンやスマートウォッチ、カーナビなどでも使われている技術だ。米国が運用するGPSをはじめ、各国で整備・高度化が進んでおり、日本でもみちびきシリーズによるシステム構築が進められてきた。2024年夏時点で、みちびきに対応する製品は429にものぼるとのこと。
みちびきの大きな特徴は、測位精度の高さ。米国が運用するGPSなどのシステムでは精度5~10メートルのところ、世界に先駆けて“センチメートル級”の精度を実現したとしている(対応する受信機が必要)。政府では、他国のシステムに頼らずみちびきのみで測位を実現する7機体制の構築をめざしており、今回の6号機は2024年度に打上げ、さらに2025年度までに5・7号機も打上げ予定。7機体制での運用開始は2026年度を見込む。
7機体制では、4機の準天頂軌道衛星が順に日本上空を訪れるよう軌道投入することで、常に1機以上の準天頂軌道衛星が高い仰角から品質の良い信号を送信できるようになるとのこと。今後さらに、バックアップ強化と測位エリア拡大のため、将来の11機体制に向けた検討・開発にも着手している。
今回、報道陣向けに公開したみちびき 6号機の主要諸元は以下の通り。打上げにはH3ロケットの「H3-22S」形態(LE-9エンジン2基、SRB-3 2本、ショートフェアリング)が使われる予定だ。
- 軌道:静止軌道
- 軌道上展開後の大きさ:全長約19m
- パドル生成電力(EOL)、構成:6.7kW、2枚構成・2翼
- 質量(ドライ/打上げ):約1.9t/約4.9t
- 搭載ミッション(質量/消費電力):575kg/2.7kW
- 設計寿命:15年以上
今後打上げ予定の5〜7号機の3機は、新たに「高精度測位システム」を搭載している点が、現行の初号機後継機や2〜4号機との大きな違いだ。衛星同士で測距信号をやりとりする「衛星間測距機能」と、地上局との間で測距信号を交わす「衛星/地上間測距機能」が加わることにより、ユーザーがより正確に測位できる仕組みを実現する。
このシステムは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が内閣府からの受託事業として実施するもので、今後5〜7号機を使って高精度測位システムを開発・実証。実証運用期間は7号機打上げ後、3年間を予定している。
JAXAでは、将来すべての準天頂衛星に両機能が搭載されれば、ユーザ測位精度は飛躍的に向上するとしている。たとえば、みちびき対応スマートフォンでは現状、誤差数cmを実現するセンチメータ級測位補強サービスは利用できず、測位精度は他国のシステム同様5~10mに留まっているが、高精度測位システムを活用することで、将来的には1mまで高精度化できるとのこと。
三菱電機は、みちびき6号機の機体公開に合わせて、報道関係者向けの説明会を同日開催。詳細は追って掲載する。