米バイデン政権は11月26日(現地時間)、米国商務省がCHIPS and Science Act(CHIPSおよび科学法)に基づき、米Intelに最大78億6500万ドルを交付したと発表した。2030年末までに予想されるIntelによる米国への約900億ドルの投資を直接支援するものであり、CHIPS法を通じたこれまでで最大の資金提供となる。Intelは3月20日に、米国内での半導体技術開発と製造拡大を支援するCHIPSインセンティブプログラムを通じて、最大85億ドルの助成を受ける予備的覚書(PMT)に署名していた。
Intelは、アリゾナ州とオハイオ州で複数の最先端のロジック半導体製造施設を建設している。またニューメキシコ州で2つの施設を先端パッケージング施設に近代化させ、オレゴン州において高NA EUVリソグラフィ装置を利用する技術開発施設を拡張するなど最先端技術研究への投資も強化している。Wall Street Journalによると、Intelは年内に少なくとも10億ドルを受け取る予定で、同社は5年間にわたり株式買い戻しを行わないことに合意している。
PMTで合意された最大85億ドルから今回の交付額が最大78億6500万ドルに減額された理由として、New York Timesは、Intelが9月に国家安全保障強化を目的とするSecure Enclaveプログラムにおいて30億ドルの契約を獲得したことと、一部のプロジェクトが2030年の政府期限より遅れる見込みであることを挙げている。
Intelは近月、厳しい経営状況に直面している。同社は業績低迷を受けて7月に、15%以上の人員削減を含む支出削減計画を発表。経営再建策の一環としてファウンドリー事業を子会社化し、外部からの資金も受け入れるようにした。
このような状況下で、最大78億6500万ドルの交付が確定した背景には、2025年1月の政権移行がある。11月5日に実施された米国の大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領が勝利した。トランプ氏は、これまでTSMCやSamsung Electronicsなどの外国企業への多額の補助金提供を含むCHIPS法に否定的な見解を繰り返し表明してきた。そのため、トランプ政権発足後のCHIPS法の不透明感が高まっており、今後も政権移行までに駆け込み発表が続く可能性が指摘されている。