慶應義塾大学(慶大)と伊藤園の両者は11月25日、「ポリプロピレン」(PP)などのポリオレフィン系プラスチックは自然界での微生物分解が非常に困難なことで知られているが、生分解性を付与できる添加剤「P-Life」(ピーライフ・ジャパン・インク製)を添加して微生物分解しやすくしたPPに対し、特に分解に適した菌を鎌倉市立西鎌倉小学校の土壌より取得することに成功したと共同で発表した。
同成果は、慶大 理工学部 生命情報学科の二木彩香学部生、慶應義塾 先端科学技術研究センターの黄穎研究員、慶大 理工学部の宮本憲二教授、ピーライフ・ジャパン・インクの冨山績社長、SI樹脂産業の安倍義人氏、伊藤園の内山修二氏らの共同研究チームによるもの。詳細は、2024年11月27~29日にマリンメッセ福岡で開催される「第47回 日本分子生物学会年会」にて、28日に口頭発表される予定だ。
海洋におけるマイクロプラスチック問題など、環境へのプラスチックの流出と蓄積が大きな社会問題となって久しい。プラスチックといってもさまざまな種類があるが、難分解性、特に自然界での微生物分解が非常に困難なことで知られるのが、単純なオレフィンをモノマーとして合成した高分子化合物である、PPやポリエチレンなどのポリオレフィン系プラスチックだ。
そうした中、ポリオレフィン系プラスチックに生分解性を付与する画期的な添加剤として、ピーライフ・ジャパン・インクによって開発されたのがP-Lifeだ。同添加剤が付与されたPPは、徐々に官能基を持つ低分子化合物へと変化。低分子化合物であれば、自然環境に生息する微生物によってゆっくりと代謝分解されるようになる。その代謝分解の検証は、JIS K6955法「プラスチックの土壌中での二酸化炭素量測定による好気的究極生分解度の求め方」に基づき、P-Life添加PPストローの生分解度測定を用いて実施されてきたというが、土中での分解速度が比較的緩やかだったため、通常の手法では分解菌の取得ができなかったという。そこで研究チームは今回、探索源や分離条件を工夫することで分解菌の単離を試みたとする。
2022年10~12月、鎌倉市立西鎌倉小学校において、科学技術振興機構(JST)共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)リスペクトでつながる「共生アップサイクル社会」共創拠点の一環として、「地球に還るストロープロジェクト」が実施された。給食で使用されるプラスチックストローをP-Life添加PPストローに置き換え、微生物の力で分解し土に還す実証実験が行われたのである。実証実験で使用された土壌には優秀な分解菌が存在すると推測され、今回の研究ではその土壌から微生物探索が実施された。