男性カップルの住民票の続柄欄に「夫(未届)」と記載して交付した長崎県大村市に対し、総務省は見直しの検討を求める文書を送った。同省は「実務上の支障をきたす恐れがある」と問題視。しかし、市は修正しない考えを示している。
大村市は5月、1人を「世帯主」、1人を「夫(未届)」とする男性カップルの申請を受理。男女の事実婚で用いるのと同じ記載を認めた。2人は性的少数者のカップルを公的に認める市の「パートナーシップ宣誓制度」を利用していた。
しかし、市の判断が妥当だったのか総務省に問い合わせたところ、同省は7月、住民票について「社会保障制度の適用を判断するための公証資料」と指摘。同性カップルと事実婚の夫婦の続柄を同じ表記にすることで「住民基本台帳法の運用として実務上の問題がある」との見解を文書で示した。
これに対し、市は「どういった支障をきたすのか」として、記載をそのままにするか訂正を行うかなどの判断について総務省に再質問していた。
同省は9月に再度、文書で回答。住民票の事務処理について、最高裁判決で「できる限り統一的に記録が行われるべきだ」とされていると強調。続柄の記載について「改めてご判断いただきたい」と市に再考を求めた。
事実婚の夫婦は法律上の夫婦と社会保障の面で同じ扱いを受けているが、同性カップルは受けていない。総務省が「実務上の支障をきたす恐れがある」としているのは、社会保障の適用の確認を住民票の続柄だけで判断できなくなるというのが理由だ。
市は記載を修正しない理由について「住民票の続柄記載を含めた事務が自治事務であれば、自治体の判断、裁量でできるものではないか」と説明。「続柄だけで社会保障制度の適用判断はしていない」と反論している。
同性カップルの住民票記載について大村市と同様の対応を取る自治体は増えている。栃木県鹿沼市は7月から開始。東京都世田谷区と中野区は11月から対応できるようにした。