恒例の『財界賞』『経営者賞』の選考委員会が11月7日(木)、午前11時30分から東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急で行われ、令和6年度の授賞者が、次のように決まりました。授賞理由は次の通り。詳しい選考経過は次号「新年特大号」(12月11日発売)で一挙掲載します。 (敬称略)
『財界賞』 日本商工会議所会頭 小林 健
中小企業の生産性向上なくして日本の再生はない─―。 真のデフレ脱却へ向け、日本企業の99%、従業員数の約7割を占める中小企業の活性化に尽力。賃上げと価格転嫁の好循環を実現するため、全国の商工会議所を中心に、中小企業への伴走支援に取り組む姿勢が評価された。取引価格を適正化するため、政府や大企業にも自ら働きかけた他、商社時代の経験を活かして、企業の経済価値・社会価値・環境価値の向上につとめる姿勢も高く評価された。
『財界賞特別賞』 東日本旅客鉄道(JR東日本)会長 深澤祐二
少子高齢化に加え、地方創生が日本の大きな社会課題になる中、鉄道や不動産などで地域の活性化を図っている。首都圏の駅構内にあるエキナカの開発や新潟駅をはじめとした各地方都市における駅周辺再開発など、賑わいの創出や中心市街地の活性化にも取り組んでいる。また都心の「高輪ゲートウェイシティ」開発では「未来への実験場」を謳い、産学連携や地域連携で鉄道会社として日本創生にも貢献していることが高く評価された。
『経営者賞』 アシックス会長CEO 廣田康人
社長就任以降、世界トップレベルの選手が履くシューズ開発に注力、2024年に開催されたパリオリンピック男子マラソンで、16年ぶりに着用選手がメダルを獲得。創業者・鬼塚喜八郎氏の「頂上作戦」の精神を引き継いだ開発「Cプロジェクト」が実を結んだ。また、コロナ前から力を入れてきたDXでは会員制プログラム「OneASICS」で顧客との連携を強めている。また、環境配慮でリサイクル可能なシューズを開発している点も評価された。
『経営者賞』 日本航空社長 鳥取三津子
航空会社の基盤である安全とサービスを客室乗務員時代から徹底してきた。旧JALとJAS(東亜国内航空)合併時には"人の融合"やマニュアル統一に尽力。コロナ禍では客室本部のトップとして、業務がない中でも自学習を進めるなど、「どん底から立ち上がるときはタダでは起きない」とメッセージを発信し、客室乗務員や社員の可能性を掘り起こしてきた。また、女性活躍の時代にあって現場出身の社長として世の中の女性に元気を与えている点が高く評価された。
『経営者賞』 東京製鐵社長 奈良暢明
鉄スクラップを原料として鉄鋼を生産する「電気炉」の大手。特に主力品種である建設用の「H形鋼」では国内シェアトップを走る他、電炉での生産が難しいとされた自動車用の高級鋼「高張力鋼板」の開発にも成功。また、ベンチャー企業と組んで、日本で初めて建材スクラップ由来の鋼材を使った自動車を完成させた。電炉は二酸化炭素の排出を抑えられる製鉄法として、脱炭素を目指す世界で改めて注目されるなど、循環型社会づくりに貢献していることが評価された。
『経営者賞』 オタフクホールディングス会長 佐々木茂喜
大正11年創業の醤油の卸・酒の小売業からスタートしてお好み焼きソース『オタフクソース』を開発し、日本の食文化の1つとして内外の人気を得ている。6代目社長として海外市場を積極開拓。お好み焼きが訪日外国人客からも絶賛される今日、その味付けを担うソースを広島で開発、製造販売し、世界に広めてきた。同社は創業家出身のファミリービジネスで100年を超えており、経営ガバナンスにも注力していることから高く評価された。
『経営者賞』 千葉エコ・エネルギー代表取締役 馬上丈司
千葉大学発の環境・エネルギー系ベンチャーとして、2012年に会社を設立。以来、1つの農地で農作物の栽培と発電を同時に行う「ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)」という手法を実践。農作物の販売と売電による2つの収入を得る新たなビジネスモデルを構築している。また、全国各地でソーラーシェアリングの事業化支援も行うなど、エネルギー確保や農業振興が日本の課題となる中、自然エネルギーによる地域活性化に取り組む姿勢が評価された。
◇『財界賞・経営者賞』選考委員
伊藤 邦雄氏 (一橋大学CFO教育研究センター長)
大宅 映子氏 (評論家・大宅壮一文庫理事長)
北畑 隆生氏 (元経済産業事務次官・開志専門職大学学長)
熊谷 亮丸氏 (大和総研副理事長)
小林 いずみ氏 (みずほフィナンシャルグループ取締役会議長)
小宮山 宏氏 (三菱総合研究所理事長・第28代東京大学総長)
嶌 信彦氏 (ジャーナリスト)
村田 博文 (総合ビジネス誌『財界』主幹)
(敬称略、五十音順)