生鮮ECや食品宅配企業では、より付加価値を高めて幅広いユーザーを獲得しようとする動きが広がっている。オイシックス・ラ・大地が展開する「Oisix」は、専門の医師と連携したがん患者向けのミールキットの提案を強化。産直通販サイト「食べチョク」を運営するビビッドガーデンは、幅広いユーザーのニーズに対応するため、冷凍総菜や野菜の定期便、ギフトECに新規参入した。オイシックス・ラ・大地傘下の食品宅配ブランド「らでぃっしゅぼーや」は旬の食材が定期的に届く「おいしい定期便」を展開して新たな顧客開拓を進めている。各社の付加価値を高める取り組みをまとめた。
【オイシックス・ラ・大地「Oisix」】
<がん患者向けのミールキット 東京慈恵医大と共同研究で有効性探る>
オイシックス・ラ・大地は、がん患者と家族の食事サポートを目的としたミールキットコース「がん患者さんとつくった ヘルスケアOisix」を展開している。
専門の医師や治療現場に携わる専門家が監修したということが付加価値となり、会員数は約2500人に達したという。
「ヘルスケアOisix」は、30人以上の医療専門職や15の患者支援団体、企業の協力を得て開発した。栄養管理や精神面の負担軽減につながる商品開発に取り組み、「安心・安全な食材宅配」「医学的な知見を参考」「がん患者さんの生活に寄り添う」をコンセプトとした。
▶「ヘルスケアKit Oisix」4つのシリーズの特徴
2024年5月には、国内外のガイドラインや基準を参考に独自の要件を設定した「バランスKit」「塩分3グラム以下Kit」「1日分の野菜Kit」「高たんぱく質Kit」の4つのシリーズでメニューを提供している。
▲「ヘルスケアKit Oisix」
包丁・ピーラーなど手先を使用する調理器具をなるべく使わずに済むよう配慮した。2024年6月からは、「体調や都合に合わせて保存の効く商品が欲しい」というニーズに応え、「ヘルスケアKit Oisix(冷凍)」の販売を始めた。2024年10月には、東京慈恵会医科大学との共同臨床研究で乳がん患者のQOLや身体の状態の変化を検査。ヘルスケアOisixと食事支援サービスを利用することで、生活の質を落とさず、副作用などを抑える有効な栄養バランスを探っていく。
現在の会員は50~60代の女性が多い。SNSや自然検索での流入のほか、各地の学会や医療関係者が主催しているイベントを通じた接点も広がっている。治療をしている高齢の両親の食事サポートのために、家族が代わりに注文する利用者が増えている。
商品を開発したサービス進化室・ヘルスケアセクション・ブランドマネージャーの谷本結花子氏は、「医療の進歩により、がんと5年、10年以上付き合う人が増えてきている。患者の皆さまが安心して毎日を送れるサポートができるサービスにしていきたい」と意気込みを示している。
【ビビッドガーデン「食べチョク」】
<新サービスで付加価値向上 冷凍、サブスク、ギフトを拡充>
産直通販サイト「食べチョク」を運営するビビッドガーデンは今秋から、冷凍総菜や野菜の定期便、ギフトECを新たに開始している。サービスを拡充して多様なニーズに対応し、付加価値の向上を目指す。
新サービスについて、秋元里奈社長は「食べチョクを利用するユーザー層やライフスタイルの多様化に伴い、多岐にわたるニーズに対応することを目的にサービスを拡充した」と話している。
冷凍総菜は、生産者の顔が見える冷凍食品のプライベートブランド「Vivid TABLE(ビビッドテーブル)」のサブスクリプションサービスとして開始する。
▲プライベートブランド「Vivid TABLE」
第1弾のオリジナル商品3品目には「食べチョク」に出品する生産者の食材を使う。パッケージに掲載したQRコードから生産者の顔が分かるという。
オリジナル3品目のほか、「食べチョク」で人気のある冷凍食品10品目から選んで購入できる。価格は「Mプラン(12食)」で1食当たり税込862円から、「Sプラン(8食)」は同916円から。
食材が選べる定期便「食べチョク ドットミィ」は、野菜を事前に登録しておけば週1回届くサービスだ。その時期においしい食材が自動で届くほか、厳選した旬の食材を自動で加えることも可能。自分の「好みの品種」を登録することで、その食材(品目)のおすすめの品種が自動で届くサービスも今後は利用できるようになるという。
▲食材が選べる定期便「食べチョク ドットミィ」
全国の隠れたギフトをコンシェルジュが選んで届けるオンラインギフトサービス「コレダギフト」は、贈るシーンやストーリーに合わせて届ける。ギフトを贈るシーンや相手の好みの情報をヒアリングし、それに合わせた商品を紹介する「マッチング」の体験を通して、最適な商品に出会うことができる。
▲オンラインギフトサービス「コレダギフト」
地域で人気の菓子メーカーや素材の良さを知る一次生産者が作ったものから、ギフトのシーンに合ったものを厳選するという。
【らでぃっしゅぼーや「おいしい定期便」】
<旬の希少価値を訴求 定期便で付加価値提供>
らでぃっしゅぼーやは、旬でおいしい生産物を届けて付加価値を高めた「おいしい定期便」に力を注いでいる。サービスを通じて、会員と食材との出会いを創出している。
「おいしい定期便」で人気なのは、「スパイスカレーセット」「蜂蜜めぐり」「石窯ピザ倶楽部」のほか、生鮮品を中心とした「〇〇制覇」シリーズだ。今秋から投入した「ぶどう制覇」は26品種のブドウを13週間に渡って届ける企画だ。
▲「おいしい定期便」
先日には「匠の餃子点心だより」を新たに追加した。手包みえびニラギョーザや手包み大ギョーザなど6種類が4週間に1回届く。価格は税込950円から。
▲「匠の餃子点心だより」
らでぃっしゅぼーや通販事業本部の吉田耕太本部長は「会員への同梱チラシで何が届くのかを一覧で見ていただき、ウェブで注文してもらう流れができている。旬の生産物が届くという体験で付加価値を高めている」と話している。