ヤマトは減益、NXは増益 物流業界で明暗が分かれる

物流業界で明暗が分かれている。直近3カ月の業績を比較した場合、厳しい環境に置かれているのが宅配系だ。

「新規顧客を安めに獲得したことで収益が追い付かなかった。単価はストレートに利益に直結するので大きく影響した。積載効率が落ち、コストも思うようにコントロールできなかった」。ヤマトホールディングス(HD)副社長の栗栖利蔵氏はこう語る。同社の7-9月期の連結経常利益は前年同期比88・7%減の12・2億円と大きく落ち込んだ。

 要因の1つは荷物量を増やすために値下げを進めたこと。宅配便の個数は上半期累計9・4億個と前年同期比3・5%の増加となった。大口法人向けで新規の顧客獲得が進んだからだ。ただ、新規顧客を獲得するために値下げを実施。単価は708円と同12円減少した。

 加えてコストも増えた。ラストワンマイルの領域でコスト削減を進めたが、宅配便の単価の下落で一部の輸送コストが増加した。また、今期に就航した貨物専用機の導入費用も響いた。下期にかけて一段と効率化を進めていく。ネットワークの構造改革に伴う拠点の投資や改修、デジタル化などの投資計画も縮小し、黒字化を目指す方針だ。

 宅配便に関しては、コロナ禍でEC通販の利便性が浸透し、荷物量が急増したが、コロナ禍が落ち着いたことに加え、昨今の物価高を背景に消費者マインドの改善に足踏みが見られ始めた。その影響で宅配便の取扱個数そのものが減少している。

 状況は佐川急便を傘下に持つSGHDも同じ。7-9月期の連結経常利益は前年同期比7・2%減の192億円に減り、売上営業利益率も前年同期の6・2%から5・3%に悪化した。

 一方で「企業間物流が回復傾向にある」(関係者)ため、企業間物流を主とする日本通運を傘下に持つNIPPON EXPRESSHDは増収増益。センコーグループHDも連結経常利益は前年同期比9%増となった。

 ヤマトHDもロジスティクス事業の強化に向けて、3PL(物流業務の一括受託)や不動産事業を展開するナカノ商会を買収するなど、法人顧客の獲得に力を入れている。

 個人の荷物と企業の荷物。同じ荷物でも景気感応度に差がある領域で企業の業績でも差が出始めている。

ANAとJALが印大手と提携 ビジネス需要の獲得を狙う