トヨタの全方位戦略の真価が問われる 市場縮小の中での「足場固め」

「グローバルで年間1000万台のペースに戻す」─。

トヨタ自動車副社長の宮崎洋一氏はこう宣言。同社の2024年4-9月期の連結決算では売上高では増収を達成した一方で、営業利益や純利益では減益となった。主因は認証不正問題によって生産を停止した影響だ。

 ただ、経営課題だった「足場固め」には手応えを見せており、今年度の見通しも売上高や営業利益などを据え置いた。実際、24年度下期の生産台数は23年度下期の約161万台から期初予想の172万台を上回る175万台に回復させる見通し。 「生産台数を回復させる裏付けとなっているのは、現地のニーズに合ったクルマを展開できているからだ」とアナリストは指摘する。例えば北米。コロナ禍以前には40日以上あった在庫日数が10日以下に圧縮され、販売奨励金も抑制。特にハイブリッド車(HV)は電気自動車(EV)に対して好調が続く。「ガソリン車よりプラスアルファの利益をもたらしている」(同)

 トヨタはさらにクルマづくりに磨きをかける構え。例えば、「AREA(エリア)35」と呼ぶ開発・生産・販売が一体となった正味率の改善プロジェクト。国内10工場で部品種類を最大80%削減することで、広い面積が必要だった在庫スペースを35%削減することに成功し、生産可能台数が年間で8万台増加。フルモデルチェンジ3回分に相当する開発工数も捻出できた。

 ただ、課題も山積だ。トランプ氏の米国大統領への再登板でメキシコなどからの輸出車に対する高関税の懸念はぬぐえない。トヨタのメキシコからの輸出台数は1-10月で20万台弱。多くは北米に輸出されている。「政権や政策がどうなろうとも、その国、その町で一番の会社を目指す」(渉外広報本部長の上田裕之氏)考えだが、事業を巡る不透明感の高まりは続く。

 また、次世代車の主流になるとみられるEVやプラグインハイブリッド車(PHV)への対応も課題だ。上半期でHVを200万台以上販売したが、PHVとEVの販売はそれぞれ7万台にとどまる。加えて市場も縮小の一途だ。だが、〝全方位戦略〟に変更はない。

「挽回のステージにある」(宮崎氏)と語るトヨタ。足場固めと同時に、現地のニーズに合ったクルマをタイムリーに提供し続ける体制づくりが求められる。

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