onsemiは11月19日、都内で記者説明会を開催。本社CEOのHassane El-Khoury氏がビジネスの動向について説明を行った(Photo01)。
昨年も同様にビジネス動向の紹介が行われたが、昨年に比べて今年は業績が振るわない(Photo02)事もあってか、昨年の様な元気の良いスライドは無く、第3四半期のEarnings Presentationsをベースにした2023年度の結果が紹介されるに留まった(Photo03)。
その一方で、つい先日も発表された様に、「Intelligent Power」(EliteSiC)と「Intelligent Sensing」(Hyperlux)に新しく「Treo Platform」を追加してビジネスの柱を3本にしており、これに併せてAMG(Analog&Mixed-signal Group)を新たに設立したのが昨年からの最大の変更点となる(Photo04)。
ここからは各論である。Intelligence Sensingに関して言えば、現在有望視されているマーケットがこちら(Photo05)。
ちょっと面白いのがMobile Robotsで、これは例えば工場だったり倉庫だったりでの搬送向けシステムであるが、こうしたものはバッテリー駆動なので省電力へのニーズが高いし、また作業員のそばで動くので安全性確保のための全周センサーなども必要になる関係で、より大量のセンサーを必要にあり、急速に売り上げが伸びることが想定されるという話であった。
Treo Platformに関してはすでにこちらで説明している内容と重なるので割愛するが、ちょっと興味深かったのはTreoのコンポーネントの中にDSPが含まれている事だ。
onsemiは補聴器向けに「Audiologyシリーズ」というDSPをラインナップしているが、これは本当にオーディオ向けのソリューションであり、汎用向けではない。この辺をどうするのか?(汎用DSPを自社開発するのか、それともCEVAなどのIPベンダーからDSP IPの提供を受けるのか?)と確認したところ、「そもそも想定しているのはPower Management Subsystem向けの電源制御などであって、それほど高い性能は必要としない」という話であった。長期的にはちょっと疑問(最近のデジタル電源向けDSPは結構高性能なものが多い)が、少なくとも短期的にはそこまでのニーズは無い、という事かと思われる。
やや低調とされる自動車向けであるが、こちらもさまざまな箇所で同社の製品が利用されており、それもあって短期的には伸びは期待できないが、長期的に見れば確実に売り上げが期待できるとした(Photo07)。
面白いのはSiCデバイスに対する期待で、例えば新しいバッテリー技術が開発されたり、急速充電へのニーズがより高まったりすれば、Level 2/3の充電ステーションの増設が行われることになり、そこにはSiCが使われることになるとし、単調増加とか急激な伸びは期待できないが、長期的にはSiCへのニーズはどんどん高まってゆく、と強調した。
これは日本の自動車業界についても同じ(Photo08)であり、BEV(電気自動車)だけではなくHEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド)やバッテリーを利用したRange Extenderなどさまざまな形態が考えられるが、次第にバッテリーを搭載する車両は増えてゆくし、そこにSiCが使われてゆく比率も次第に増える、とした。
全体としては昨年と大きく変わらない話であったが、今年の説明会では大統領選の結果を受けて今後の戦略に変化があるかを尋ねる質問が多く寄せられ、それに対して「トランプ次期大統領が何をし、何をしないかを予測するのは非常に困難だ」(El-Khoury CEO)とした上で、同社の戦略はあくまで顧客がどんなものを要求するかに立脚しており、政治的な要素は考慮していないと断言していたのが印象的であった。