スーパーコンピューターの計算速度の世界ランキング「TOP500」が19日、明らかになり、米ローレンスリバモア国立研究所が新たに導入した「エルキャピタン」が1位となった。前回まで5連覇を果たした「フロンティア」などと合わせ、毎秒100京回(京は1兆の1万倍)を意味する「エクサ級」のスパコンは集計上、3台となった。理化学研究所の「富岳(ふがく)」は前回の4位から6位に後退した。
TOP500は性能評価用プログラムの処理速度を年2回競うもの。米ジョージア州アトランタで開かれた国際会議で日本時間20日に正式発表される最新版では、米エネルギー省、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ、AMDなどが開発したエルキャピタンが毎秒174京2000兆回。これに米国の3台、イタリアの1台が続いた。44京2010兆回の富岳はトップ5から外れた。
エルキャピタンは国家核安全保障局の3研究所が利用。核実験を行わずに備蓄核兵器の信頼性を確認することなどに役立て、米国の核抑止力確保に貢献するという。物理学研究などにも用いる。ローレンスリバモア研は機密性の低い研究に広く使うため、エルキャピタンの小規模版「トゥオルミ」も新たに導入しており、10位となった。
上位500台の内訳は米国が最多の172台。これに中国63台、ドイツ41台、日本34台、フランス24台が続いた。一方、中国は今年5月発表の前回に続き新たなランクインがなく、TOP500への参加に対し消極姿勢に転じた可能性がある。正確な性能は不明だが、少なくとも2台のエクサ級スパコンを開発済みとされる。
日本は先代「京(けい)」が2011年に連覇した後、中国や米国に抜かれた。20年6月、富岳で8年半ぶりに首位となり、21年11月まで4連覇した。
TOP500と同時に発表された、産業利用に適した計算の速度を競う「HPCG」と、グラフ解析の性能を競う「Graph(グラフ)500」で、富岳は10期連続の1位を達成。実用性で強さを見せた。AI(人工知能)の深層学習に用いられる演算の指標「HPL-MxP(旧HPL-AI)」では4位となった。
富岳は理研と富士通が共同開発。理研計算科学研究センター(神戸市)の京の跡地に設置され、2020年4月からの試験利用を経て21年3月に本格稼働した。文部科学省「成果創出加速プログラム」のほか、一般公募や国の重要課題での利用などが進んでいる。文科省の専門委員会は今年6月、後継機について、富岳の5~10倍以上の性能を持ち、AI性能などで世界最高水準とするとの開発方針をまとめた。2030年頃の稼働を目指す。
TOP500のランキング上位は次の通り(名称、設置組織、国、毎秒の計算速度)。
1位 エルキャピタン ローレンスリバモア国立研究所(米国)174京2000兆回
2位 フロンティア オークリッジ国立研究所(米国)135京3000兆回
3位 オーロラ アルゴンヌ国立研究所(米国)101京2000兆回
4位 イーグル マイクロソフト社(米国)56京1200兆回
5位 HPC6 エニ社(イタリア)47京7900兆回
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