ヤマハ発動機は11月14日、新薬開発を目的とした研究・実験の効率化および精緻化に貢献する新型細胞ピッキング&イメージングシステム「CELL HANDLER 2」の完成を発表。2025年3月に発売することを明らかにした。
これに際し同社は記者発表会を開催し、新製品を初公開するとともにその強みや展望を紹介。また新規事業として位置づける医療・健康分野における展望も語られた。
急速に発展する医療分野にアプローチするヤマハ発動機
科学技術の進化が進む昨今、新薬の開発に費やされる費用は増加傾向にあり、特に新たに増加するiPS細胞などの幹細胞を用いた創薬研究、および実験動物を用いない非臨床試験においては、細胞の取り扱いの効率化や精緻化に加え、工程全体の自動化・省力化・デジタル化が求められている。
そうした中でヤマハ発動機は、同社が提供する表面実装機(サーフェスマウンター)を中心とした産業用ロボット技術のさらなる活用を視野に、2010年よりメディカル分野への適用の検討を開始。そして2017年、細胞ピッキング&イメージングシステムの初号機として「CELL HANDLER」を発売した。
同製品の開発にあたっては、超高速・高精度でのピック&プレース技術を応用し、産業用ロボットが取り扱う電子部品などに比べ不均一な形状で柔らかく壊れやすい細胞(塊)に適した吸引吐出技術や画像処理技術を開発したとのこと。これにより、手動では困難な速度・精度で対象の細胞を選択して、高密度培養プレートへと1つずつ移動するとともに撮像し、画像情報としてのデータ化を実現したとのこと。ヤマハ発動機 新事業開発本部 MDB部の松野潔高部長は、この現行製品について、「国内の研究機関や大手製薬企業を中心に導入が広がっており、一部欧州でも導入実績がある」とする。
しかし最初の製品リリースから時間を経るとともに医療技術も大きく進展し、AIの導入を筆頭に最新技術の導入も急速に進行。加えて既存顧客からも、さらなる生産性向上に向けたさまざまな声が寄せられたといい、ヤマハ発動機はこれらの新たなニーズに応えるため、新製品の開発・市場投入に向けて始動したとしている。
AIを搭載した新製品は3つの機能強化ポイントが特徴
今般発表されたCELL HANDLER 2は、「細胞研究のベストパートナー」を開発コンセプトに掲げ、新発見を目指す研究者をサポートするため、機能強化およびユーザーエクスペリエンス(UX)向上を実現したとのこと。また、AIなどの最先端技術を導入するとともに、実際に従来品を使用していた研究者たちからのフィードバックを基にしたアップデートを行い、ユーザビリティの向上に貢献するという。
新製品の概要説明を担当したヤマハ発動機 新事業開発本部 MDB部 技術グループの熊谷京彦グループリーダーは、新製品が誇る特徴の1つ目として“画像解析力の向上”を挙げた。新製品では、従来機から受け継いだ4倍・10倍の対物レンズを活かし、新たに位相差観察が可能になったとのこと。また20倍の対物レンズも追加し、より高解像度での観察が可能になったとする。加えてオートフォーカス機能やタイリング画像の自動生成など、研究を効率化させる新機能も搭載。動画での記録も可能になるなど、さまざまな研究への対応能力も有するとした。
次に挙げられたのが、“AI機能の搭載”だ。あらかじめヤマハ発動機側でデータ学習を行ったAIを新製品に搭載することで、装置を導入した各現場に適した画像解析を行い、必要な細胞を自動で検出するとのこと。これまで識別が難しかった条件についても、正確に反映できるとする。