流動化する日本の政治 新大統領誕生の米国や中国とどう向き合う?

憲法改正問題で封じた持論

「自公で過半数」を目標に据えた石破茂首相は衆院選の大敗に反省を述べつつ続投に意欲を示したが、政治は流動化(10月29日時点)。だが、日本を取り巻く厳しい情勢は今以上に緊迫する。

 直近の課題は対米関係だ。「分断」が深刻化する米国は大統領選で更に混乱する可能性がある。そして内向き志向が強まるとの見方がもっぱら。経済で言えば保護主義的な傾向が強まり、国際社会にも影響を与える。

 米国による関税引き上げの最大のターゲットは中国だ。いまや米国をしのぐ世界最大の貿易国となった中国との経済対立は更に悪化する可能性がある。

 そして経済と政治の対立が連動しそうなのが台湾有事。中国国家主席の習近平氏は3期目の任期が終わる2027年までに「台湾統一」を目指すとの見方がある。憲法を改正して任期制限を撤廃済みの習氏は「4期目」も照準に入れ、その成果に「台湾統一」を位置付けるとされる。

 中国が台湾に侵攻した場合、日本国内への侵入も否定できない。米国が軍事的に対抗する可能性は高く、戦後の日本が体験したことのない事態が生じうる。

 防衛に詳しい石破首相だが、「外交の石破」のイメージはない。基本的には日米同盟を軸に、中国の軍事的脅威を抑止するための態勢強化路線を踏襲するだろう。ただ対立の裏で、米中は閣僚レベルの交流は頻繁に実施している。一方の日本はハイレベルでの対面の機会に乏しい。

 米中の間にある日本が主体的な役割を果たすことが期待されるが、その際の懸念は石破首相が持論とする日米地位協定の改定とアジア版NATO(北大西洋条約機構)を進めるかだ。

 もとより石破首相は憲法改正論者だ。持論は、戦力不保持を定めた9条の「2項削除」だが、自民党が9月にまとめた論点整理で、9条を維持した上での「自衛隊の明記」を掲げると、自らの主張を封印した。本音で党の案に賛成しているわけではない上、そもそも衆院選の間、石破首相は演説で憲法改正の必要性にほとんど触れなかった。

 石破首相は様々な面で「変節」が指摘される。良い意味での変節は歓迎だが、対米、対中で誤った変節を選択すれば、国益を大きく損なうことになる。