楽天グループ(楽天G)は11月13日、傘下の楽天カードとともに、みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)や、その傘下のみずほ銀行、ユーシーカード(UC)、オリエントコーポレーション(オリコ)と業務提携契約を締結した。楽天Gとみずほ FG は同日、株式譲渡契約を締結し、みずほFGは12月1日付で楽天カードの普通株式の14.99%を楽天Gから取得する。11月14日に開催した記者発表会では、業務提携の狙いや具体的な内容について紹介した。
楽天Gは、他にはない独自の「楽天エコシステム(経済圏)」を形成し、国内外の会員が複数のサービスを回遊的・継続的に利用できる環境を整備することで、顧客のライフシーンを幅広くカバーする利便性の高いサービスを提供している。ポイント還元など経済圏全体で相乗効果を創出することで、会員一人当たりの生涯価値(ライフタイムバリュー)の最大化を目指している。
楽天Gの三木谷浩史社長は、アフターコロナで対面取引が拡大している中、「楽天カードがエコシステムの拡大の鍵を握っている。2005年のカード発行当初は、1日50枚程度だったが、現在は1日1万枚以上を発行している。発行枚数は3144万枚となり、取扱高は21兆円と30兆円に手が届くところまできた」と好調ぶりを紹介した。
「楽天カード」は発行枚数3000万枚以上、取扱高30兆円、取扱高シェア30%の「トリプルスリー」を目標として掲げている。
三木谷社長は、「楽天カード傘下には楽天ペイメントがあり、ポイント、カード、コード決済、銀行、モバイル、保険などさまざまなサービスがエコシステムにはある。楽天G内でのフィンテックの売上は3割を超えており、さらなる拡大を狙う。その中で経済圏の拡大や法人を中心とした顧客基盤の拡大に向け、今回の提携に至った」と説明した。
▲楽天グループ 三木谷浩史社長(左)とみずほフィナンシャルグループ 木原正裕社長(右)
一方、みずほFGは、顧客が心地良く、使い勝手が良いサービスの構築を目指している。傘下のオリコは、顧客一人ひとりに信頼されるパートナーであり続けることを目指している。
みずほFGの木原正裕社長は、「デジタルが加速すればするほど、『対面』の価値も出てくる。みずほは対面に強みがあり、デジタルとコマースに強く、日本で一番使いやすいポイントを持つ楽天Gと組むことで、できること広がる。証券の提携からもう一段広げて取り組んでいく」と説明する。
<2023年11月に傘下の証券会社で資本業務提携>
楽天GとみずほFGは2023年11月9日、傘下の証券会社の戦略的な資本業務提携の強化について発表している。フィンテックを活用した資産形成・資産運用分野における新たなリテール事業ビジネスモデルを実現するべく、取り組みを推進してきた。
これらを契機に、両グループでさまざまな議論を重ねた結果、消費者支持を獲得するための商品性向上や、加盟店ニーズを満たすためのソリューション開発など、競争が激化する決済ビジネスにおいて、それぞれの強みを持ち寄ることで、より利便性の高い、新たなリテール事業ビジネスモデルが創造できると考え、今回の業務提携の締結に至った。
<「みずほ楽天カード」を12月から提供>
業務提携の具体的な取り組みとして、提携カード「みずほ楽天カード」を発行する。楽天ポイントがたまり、ATM手数料も優遇されるクレジットカードを12月から提供する予定だ。
▲「みずほ楽天カード」券面イメージ
さらに、来春以降に予定している、みずほ銀行のみずほマイレージクラブのリニューアルにおいて、新たに提供予定のポイントサービスでの連携など、さらにお得に利用できる特典を検討していく。
「楽天市場」では、楽天ユーザーの方が簡便に申し込みでき、即時に審査結果が得られ、繰り返し利用することができるデジタル分割払い機能の導入に向け、検討していく。顧客のニーズに合わせた支払手段の一つとして、楽天カードにデジタル分割払い機能を付帯させることのフィージビリティも協議・検討していく。
<法人・加盟店向けサービスも強化>
法人・加盟店に向けては、楽天Gや楽天カードが保有する加盟店向け決済機能や取引データ、みずほFGが保有する企業向け資金繰り支援ノウハウや各種決済サービスを組み合わせ、新しいソリューション(回収業務の効率化や精算業務のDXなど)を協働で提供していくことを検討していく。
その一環として、楽天カードとUC、オリコは、それぞれのノウハウを活用し、楽天Gが展開するサービスに関わる約90万社の加盟店などの事業者を中心とした法人に対し、より弾力的に信用供与可能となる新しいビジネスカード(法人向けカード)を発行することを検討していく。
<共通業務の効率化を図る>
みずほFG、オリコ、楽天Gの各社のクレジットカード事業におけるアクワイアリング業務やバックオフィス業務などの共通業務の効率化を図ることで、さらなる付加価値の高いサービスの実現を模索していく。アクワイアイング業務においては、各々が有する数百万の加盟店網の有効活用として加盟店の相互開放や加盟店開拓などを模索する。
昨今、社会問題となっているクレジットカードの不正利用について、その手口及び対応策を両グループで共有し、クレジットカード業界全体の不正被害の削減への貢献についても模索する考えだ。
これらの取り組みにとどまらず、両グループの顧客が、さらにお得で、便利に、双方のサービスを利用してもらえるよう、さまざまな施策を検討していく。