ストが痛手となって八方塞がり暗雲漂うボーイング

 米航空機大手ボーイングが発表した24年7-9月期決算は純損益が61億7100万㌦(約9400億円)の赤字となった。9月中旬から始まったストライキによる生産停止や、防衛宇宙部門での開発遅れなどが響いた。

 

 赤字計上は9四半期連続で、前年同期の16億3800万㌦から拡大。スト長期化でさらなる業績悪化は避けられず、まさに八方塞がりの状況だ。今年1月には主力機「737MAX9」型機が運航中、窓枠が吹き飛ぶ事故が発生。米連邦航空局(FAA)が737MAXシリーズの増産に待ったをかけたため、生産停滞を余儀なくされた。

 さらに打撃を与えたのが16年ぶりのストライキだ。経営側と労組執行部は9月、4年間で25%の賃上げなどを盛り込んだ労働協約案で合意した。ところが、当初要求した40%からかけ離れていたため、投票で組合員の9割が反対し、スト入りに。その後の協議は難航を極めた。

 経営側が労組に35%の賃上げや、協約承認後に一時金を支払う妥協案を10月中旬に提示したものの、再び否決されてスト延長が決まった。ストを実施している組合には従業員3万人超が加盟し、西部ワシントン州などの複数の工場で操業停止に追い込まれた。大型機の「777」や中型機の「767」などの生産に支障が生じている。

 

 三菱重工業など日本企業も部品を供給しているが、スト長期化に伴い、業績に響く可能性も取り沙汰されている。また、ANAやJALといった日系エアラインもボーイングから新機材の購入・導入を決めており、需要に沸く航空業界にも水を差す事態になりかねない。

 ボーイングの24年7-9月期の営業キャッシュフローは13億4500万㌦の赤字に陥り、手元現金は104億7000万㌦と前期と比べて1割減少。ストは財務基盤も傷つけている。財務状況の改善に向け、ボーイングは人員1万7000人削減や新たな資金調達策を公表した。

 ただ、ストがいつ収束するか予測不能なため、経営不振から脱するのは容易ではない。工場稼働が再開してもサプライチェーンの混乱は続く見通しだ。

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