資金運用に失敗して巨額の赤字を計上した農林中央金庫。農林水産省は9月27日、農林中金のあり方を探る「農林中金の投融資・資産運用に関する有識者検証会」を開いた。
農林中金は今年3月現在、56兆円を運用。このうち31兆円分について米国債を中心とした債券につぎ込んだ。米国債は利回りでは有利だが、2年前から米国の金利が上昇。その分、価格が低下して含み益を抱え、25年3月期では1.5兆円の赤字になる可能性がある。
農林中金は全国の農協組合員らの貯金を運用する。組合員らの貯金は全体の108兆円で、三菱UFJ銀行の192兆円などと大きくは変わらない。
銀行は通常、企業に貸し出して金利を稼ぐが、農林中金は米国債で運用し、その稼ぎを各農協などに回してきた。日本国内の553(2022年度)の農協のうち、農作物を売買する経済事業では8割が赤字。金融の信用事業では95%が黒字で、農林中金頼みだった。
今回、それが崩れたことは農協にとって痛手だ。どこかのタイミングで、運用先を分散させることはできなかったのか、農林中金の意思決定の仕組みや組織体制なども調べる。
融資の少なさも課題だ。23年3月時点で、業種別の貸出金残高をみると、製造業が2兆5369億円だが、農業は643億円にとどまっている。農水省は、農業の規模拡大や多角化で資金ニーズが高まっていくとみる。そのとき農林中金の積極的な投融資を期待している。
小里泰弘・農林水産大臣は10月2日の記者会見で、これまでも農水省は農林中金に対して、ヒヤリング・立ち入り検査で状況を把握してきたことを強調。金融庁と連携し、「同金庫における適切なリスク管理体制の構築に向け、指導していきたい」と語った。1日に就任したばかりだが、新大臣の力量を図る試金石になりそうだ。