クラウド型の業務支援ソフトを手がけるサイボウズは11月7~8日までの2日間、幕張メッセ(千葉市美浜区)で同社最大の年次イベント「Cybozu Days(サイボウズデイズ) 2024」を開催した。
同イベントは2016年の初開催から今年で9回目の開催となる。126社のパートナー企業が展示ブースを設け、大小さまざまな9つの会場で60以上のさまざまな講演が行われた。
今年のテーマは「東京ノーコードランド~DXのゲームチェンジを楽しもう~」。ドット絵を基調とした会場内は独特の世界観で彩られており、夢の国に迷い込んだような感覚に陥った。普段は頑張って隠している子供心が思わずあふれ出てしまうほど、ワクワクする空間だった。筆者は2020年から毎年サイボウズデイズに参加しているが、国内IT企業のイベントとは思えないその独特な世界観に魅了されっぱなしだ。
サイボウズはノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」の展開を加速しており、同イベント内でもさまざまな新機能が発表された。kintoneユーザーによる講演も多く、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ノーコード、マネジメントなど、さまざまな「気づきと学びのアトラクション」が用意されていた。
7日の基調講演に登壇したサイボウズの青野慶久社長は「企業規模問わず、日本全国各地でさまざまな企業がDXに取り組んでいます。その裏で大活躍しているのがノーコードと呼ばれる技術。ノーコード開発の成功事例や関連ソリューションをたくさん集めたこのテーマパークを、存分に楽しんでください」と来場者に呼びかけていた。
それでは、同イベントの様子をたくさんの写真とともに振り返っていこう。
大人から子供まで楽しめる“ノーコードの遊園地”
ひときわ目立っていたのが、イベント会場の中央部に設置された「ノーコード城」だ。大型スクリーンを4つ半円形に配置した大規模な講演会場で、その頭上にはドット絵調のお城がプロジェクションマッピングによって浮かび上がっていた。
「ノーコード城」のほか、「カピパラダイス」や「ウーパールーパーティ」といった動物たちをモチーフにした遊園地らしい講演会場がいくつもあった。
また、サイボウズ製品はもちろん、120を超える連携サービスや構築支援の紹介ブースが出展していた。セミナーを開催する出展企業もあり、多くの来場者が耳を傾けていた。
サイボウズのオリジナルグッズや書籍を販売する「サイボウズ商店」にも多くの来場者が足を運んでいた。ここでしか買えないグッズなどもあり、筆者は、kintone公式のお仕事漫画「ホップ☆ステップ きとみちゃん」のグッズが気になった……。
本当の遊園地かと錯覚してしまうようなアトラクションもあった。「お楽しみコーナー」には、大型の滑り台やボルダリング、点数を競うミニゲーム、プリントシール機などがあり、子供から大人まで楽しんでいた。
出展ブースエリアの至るところにキリンや猫、レッサーパンダといったかわいいマスコットキャラがいてとても癒された。
また、スタンプがあちこちに設置されており、多くの来場者がスタンプを集めて豪華景品が当たる抽選会に参加していた。
「配信コーナー」では、サイボウズ公式の営業本部チャンネルが、会場内の様子をYouTubeで生配信していた。「クリヤマラウンジ」では、サイボウズ 執行役員の栗山圭太さんらがMCとなり、ブース出展社を招いてブースの見どころを紹介していた。紹介の様子は、各講演会場のスクリーンに中継していた。
大注目のイベント「kintone AWARD 2024」が開催
サイボウズデイズ2日目となる8日、特に注目を集めたイベントが「kintone AWARD 2024」だ。2024年は、広島、札幌、福岡、大阪、名古屋、東京の6カ所で、kintoneユーザーが活用アイディアを共有し合あうイベント「kintone hive 2024」が開催された。その集大成となるイベントがkintone AWARD 2024で、各地区のファイナリスト企業が集結した。
kintone hiveは2015年から開催しているイベントで、今年でちょうど10回目の開催を迎えた。これまでに100社以上の企業が登壇し、累計参加者数は1万人を突破。2024年の登壇者数は37社で、参加者数は2500人以上だった。kintone AWARDでは、すべてのファイナリスト企業の講演が終了した後、来場者と審査員による投票でグランプリを選出する。
見事グランプリに輝いたのは、物流機器のリユース事業を手がけるワイドループの川咲亮司さん。同社は、ドラッグストアやスーパーで商品を運搬する台車、倉庫でモノを運ぶパレット、各種ラックなど物流現場で使うマテリアル・ハンドリング(マテハン)の中古品を買い取り、販売を行っている会社だ。
川咲さんは「僕とkintoneの最優記」と題したプレゼンテーションを行い、kintoneで基幹システムを構築した事例を紹介した。スライド資料にシュールなイラストをふんだんに使い、プロジェクトを進める上で立ちはだかった壁や、その壁を乗り越えた施策などを面白おかしく紹介していた。
川咲さんは「本気を出せば、kintoneで基幹システムまで作れちゃいます。それを実現するためには、問題提起とロジカルな情報整理ができる人材が最低1人は必要です。そして、なんだかんだで人間関係が一番重要です」と来場者に訴えかけた。詳しい講演内容は別の記事でレポートしよう。
グランプリに選ばれた川咲さんは「基幹システム入れ替えや構築を検討しているたくさんの企業に、kintoneが一つの選択肢になるということが伝わっていればうれしいです」とコメントした。
kintoneに生成AIが搭載へ!
今年のサイボウズデイズで最も注目を集めた発表が、kintoneに生成AIを追加した新機能「kintone AIアシスタント(仮称)」だ。1日目の基調講演で、新機能のβ版を2025年1月に提供することを青野社長が明らかにした。
新機能により、kintoneユーザーは生成AIを活用してアプリ上のデータを検索できるようになる。RAG(Retrieval-augmented generation:検索拡張技術)と呼ばれる技術を活用した機能で、ユーザーが自然言語による質問を投げかけると、AIがkintone上のアプリを横断的に分析し、適した回答を生成してくれる。
例えば、「A社との商談で参考になる情報は?」と質問すれば、AIがkintone上にある複数のアプリの情報を参照し、「管理部門をターゲットにした事例や提案資料が参考になります」と情報元となるアプリ情報とともに返してくれる。
また同β版では、AIの活用だけでなく、AI機能を自身で作成・変更できる。自社に適したAI機能を管理画面から作成することができ、一度設定した機能は柔軟に変更することも可能だ。回答の精度を調整する「システムプロンプト」や、何を質問すればよいかが分からないユーザー向けに「定型プロンプト」を事前に設定することもできる。
TECH+などの取材に応じた青野社長は「kintoneはITの知識がない人でも業務アプリを作れるツールです。生成AIに関しても誰でも使える機能でありたい。大手企業の現場部門から中小企業まで、企業規模を問わず、『AIの民主化』を後押ししていきます」と今後の展望を話していた。