サイボウズは11月7日、同社が提供するノーコード開発ツール「kintone(キントーン)」の新機能「kintone AIアシスタント(仮称)」のβ版を発表した。kintoneと生成AIを組み合わせ、ユーザーのデータ利活用を後押しする。
kintoneの検索機能に生成AIを活用
新機能は、サイボウズが11月7日~8日まで開催している同社最大の年次イベント「Cybozu Days(サイボウズデイズ) 2024」にて発表された。今回提供するβ版は、「kintoneの検索機能」と「検索拡張技術(RAG)」を組み合わせた新機能となる。
RAG(Retrieval-augmented generation)とは、大規模言語モデル(LLM)によるテキスト生成に、外部情報の検索を組み合わせることで、回答精度を向上させる技術のこと。これにより、アプリに蓄積されたデータを検索する機能を搭載し、自然言語による検索などができるようになる。
ユーザーがチャット形式で検索すると、複数のアプリ内のデータを横断的に検索し、生成AIが回答を生成する。例えば、「A社との商談で参考になる情報は?」と質問すれば、AIがkintone上にある複数のアプリから情報を参照し、「管理部門をターゲットにした事例や提案資料が参考になります」と情報元となるアプリ情報とともに返してくれる。
社内システムに関するFAQなどにも活用でき、「大阪出張の精算方法を教えて」や「Wi-Fiの接続方法を教えて」といった質問に対しても即座に回答してくれる。検索結果にはアクセス権が反映され、権限のないユーザーには非公開となる。ユーザーは大量かつ多様な情報の中から知りたい情報を素早く探せるほか、これまで蓄積した案件情報や問い合わせ対応履歴といった情報を有効活用できるようになる。
サイボウズ青野社長「かなり面白い機能だ」
イベント会場内でTECH+などの取材に応じたサイボウズの青野慶久社長は、このタイミングで生成AIを活用した新機能を発表した理由について、「AIの流行に飛びつくことなく、誰でも扱えるAI機能の開発を進めてきた。kintoneによる情報共有とAIの相性はとてもよく、かなり面白い機能であることが分かってきたのでこのタイミングの発表となった」と答えた。
同β版では、AI機能の作成のほか、作成したAI機能の設定を柔軟に変更することも可能だ。管理画面から、回答の精度を調整する「システムプロンプト」を事前に登録することが可能で、何を質問すれば分からないユーザー向けに定型プロンプトを用意することもできる。「こういう入力ができる」と例を示すことで、入力の手間を省くことにもつながる。
サイボウズは11月7日~30日までの期間で、同β版の利用ユーザーを募集する。kintoneをすでに利用しているユーザーが対象だ。2025年1月から、応募したユーザーの中から限定して提供する予定。その後、β版の運用・検証で得たフィードバックを生かし、AI機能の改善・開発を進めていく考えだ。
青野社長は「kintoneはITの知識がない人でも業務アプリを作れるツール。生成AIに関しても誰でも使える機能でありたい。AIに質問すること自体は簡単だが、AIを構築しようと思うと難しい。kintoneのAIも、IT知識やAIに関する専門知識がなくても簡単に設定できるようにした。大手企業の現場部門から中小企業まで、企業規模を問わず、『AIの民主化』を後押ししてきたい」と今後の展望を述べた。