ふるさと納税 、「ポイント禁止」を自治体3割が不安視 ルール変更に振り回される寄付者

ふるさと納税市場が拡大している。2023年度のふるさと納税全体の寄付の受入額は、前年度比21.7%増の1兆1175億円となった。一方、総務省は毎年のように、ふるさと納税に関する制度変更を行っており、自治体や寄付者は振り回されているようだ。本紙はこのほど、自治体を対象に、ふるさと納税に関するアンケート調査を実施。42の自治体から回答を得た。23年10月に導入された「5割ルール」の影響で、「寄付額が減少した」と回答した自治体は、48.7%に上った。2025年10月に導入される予定の「寄付額に応じたポイントを付与するポータルサイトの利用を禁止する」制度改正については、「寄付件数が減りそう」と予想する自治体が、33.3%に上った。

 

<2023年8・9月に駆け込み需要>

2023年度のふるさと納税では、前年度1位の宮崎県都城市と、同2位の北海道紋別市が、どちらも順位をキープした。ただ、寄付額はどちらも前年度比で微減となった。

寄付額が1~15位までの自治体では、11自治体が前年度比で2桁成長を遂げていた。寄付額を50%以上伸ばした自治体も五つあった。

2023年度のふるさと納税市場が伸びた要因の一つとして、2023年10月に導入された「5割ルール」をきっかけとした、駆け込み需要の高まりがあったとみられる。「5割ルール」では、「返礼品の費用や、ポータルサイトへの広告費・手数料、ワンストップ特例事務費用など、寄付の募集に要した費用の総額を、寄付額の5割以下に収めなければならない」と定めている。

ポータルサイトの「さとふる」によると、「5割ルール」がきっかけとなり、2023年8~9月において大規模な駆け込み需要が発生したという。「さとふる」における、2023年8~9月度の寄付額は、過去最高を記録したとしている。

「5割ルール」が導入されたことによって、例えば、これまで1万円の寄付額の返礼品として提供してきたものが、1万円の範囲に収まらなくなるケースがでてきている。そうした場合、寄付額を高く設定し直す必要がある。

寄付者の収入額によって控除の対象となる寄付金額の上限が異なる。そのため、返礼品の寄付金額が上がると、選ばれづらくなるという側面があったようだ。その結果、駆け込み需要が発生したとみられる。

2023年度は、被災地支援の寄付も多く集まった。2023年度の石川県輪島市のふるさと納税の寄付額は、前年度比約5倍の21億400万円となった。寄付額は前年度比で16億円以上増加した計算になる。

「さとふる」では、2024年度のふるさと納税の全体の寄付額は上向くと予想している。

<「5割ルール」で寄付額引き上げが影響>

本紙が、寄付額が多い自治体を中心に行った調査では、「5割ルール」の影響について、「制度変更によって寄付額が減少した」と回答した自治体が48.7%(20団体)、「分からない」が34.1%(14団体)だった。

自治体からは「一品ごとの寄付額を上げざるを得ず、他市町村との競争に負け寄付額が減少した」(九州地方)、「駆け込み需要が落ち着いてからは、寄付額が前年同月を超えなくなってきた」(九州地方)といった声も聞かれた。同様の声は複数の自治体から挙がっていた。

「寄付額の減少は他の要因の可能性もある」と分析する自治体もあった。

<「お得感がなくなる」>

総務省は6月、「寄付に伴いポイント等の付与を行う者を通じた募集を禁止する」旨の内容を盛り込んだ、新たな告示を発表した。2025年10月から適用される。ポータルサイトのポイントを目的にふるさと納税を利用していたユーザーが減る可能性がある。

楽天グループは6月、総務省が発表した新ルールに反対する署名の受付を開始。「民間原資のポイントまでも禁止し、地方自治体と民間の協力、連携体制を否定するものであり、各地域の自律的努力を無力化するもの」(三木谷浩史社長)だとしていた。同署名活動は、10月時点で250万件が集まっているとしている。

本紙が行ったアンケート調査では、「ポイント禁止」の影響について、「分からない」と回答した自治体が53.8%(21団体)、「寄付件数が減りそう」が33.3%(13団体)だった。「影響はなさそう」という意見も12.8%(5団体)あった。

「楽天のようにポイント還元という利益性を重視して寄付する人が多い印象があるから」(九州南部)、「ポイントが寄付の後押しをしているから」(東北)、「お得感がなくなるから」(九州中部)といった声も聞かれた。

一方で、「ポイントがなくても制度を利用する人は多い」(関西)「ポイントがなくても返礼品や控除のメリットはある」(北海道)といった声もあった。