2023年の世界の温室効果ガスの排出量は571億トン(二酸化炭素換算)に及び、前年から1.3%増加して過去最多になったとする報告書を国連環境計画(UNEP)が公表した。世界中で猛暑、豪雨や干ばつなどの「極端な気象」が頻発して大きな被害を出している。報告書は温室効果ガスの総排出量が増え続けて気候変動に歯止めがかからない現状を浮き彫りにした。
地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」は産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指している。UNEPは各国が一致して排出削減対策を強化しなければ世界の平均気温の上昇幅は今世紀中に最大3.1度に及ぶと警告している。
報告書によると、世界の温室効果ガス総排出量は1990年以降、多少の増減はあっても基本的には増加傾向が続いている。1990年の総排出量は378億トンだったが、2010年には510億トンに増加。2020年は世界のコロナ禍の影響もあって前年より減りながらも537億トンになり、23年には571億トンに達した。
各国別の排出量では、中国が160億トンで世界の排出量の約30%を占める。次いで米国が59億トンで、インドも41億トンと排出量が多い。20カ国・地域(G20)加盟国(アフリカ連合の国を除く)の合計は世界全体の77%を占めた。
UNEPの報告書は日本の温室効果ガスの排出量を詳述していないが、環境省によると、2013年度は14億トン。その後減少傾向にあったが、21年度は11億トンで前年度比2.0%増加した。
UNEPだけでなく、多くの地球温暖化に関係する報告書が世界の平均気温が上昇傾向にあることを明示している。実際、世界の平均気温は産業革命前比較で既に1.1度上昇している。こうした温暖化を何とか食い止めようとパリ協定に参加する各国は国連に温室効果ガス削減目標を提出している。だが、UNEPの報告書はこうした各国の削減努力は効果を出せていないことを示した。
そして、報告書は各国の削減目標を達成しても今世紀末には2.6~2.8度上昇してしまうと指摘。「1.5度目標」を達成するためには2030年までに排出量を19年比で42%、35年までに57%削減する必要があるとした。
国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が11月11日から22日までの日程でアゼルバイジャンで予定されている。UNEPの報告書はG20の多くが現目標の達成すら難しいと指摘した。COP29では各国が報告書が示す危機感を共有して対策強化を打ち出せるかどうかが最大の焦点だ。
産業革命前からの気温上昇が1.5度を超えると異常気象、極端な気象の発生頻度が高まり、生態系の喪失など回復できない被害が想定されている。報告書でUNEPのアンダーセン事務局長は「気候危機の時が来ている。しかし『1.5度目標』への道は可能で、COP29では全ての参加国に今すぐ (温室効果ガス排出量削減のための)行動をとるよう促したい」とコメントしている。
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