【楽天の「地域創生」最前線】ふるさと納税の「次」提案 地域産品販売で『楽天ショップ』活躍

楽天グループ(楽天)が提供する、ふるさと納税サービス「楽天ふるさと納税」への参加自治体数は、1687自治体(10月24日時点)となっている。ふるさと納税支援に留まらず、「楽天市場」内のアンテナショップで地域産品を販売したり、「楽天トラベル」で観光客を送客する施策なども成果が出ている。そのような取り組みにおいて、「楽天市場」の出店者(楽天ショップ)の活躍が目覚ましいという。

「楽天ふるさと納税」はふるさと納税サイトでもトップクラスの実績を誇る。寄付額は 年々、増加傾向にあり、登録返礼品数は約55万点(10月24日時点)に上る。

自治体がふるさと納税の取り組みを強化するために、「楽天ショップ」が活躍するケースも増えてきた。

「『楽天ショップ』が自治体から委託を受けて、ふるさと納税の中間業者になるケースが増えている。ふるさと納税の寄付の仕組みはECの仕組みと似ている部分がある。ECで培ったスキルを生かし、ふるさと納税のページを作り込んだり、返礼品の魅力を伝えるコンテンツを制作したりできる。寄付の申請に対し、迅速に返礼品を送ることで、寄付をした人の満足度も高まる。返礼品のブラッシュアップや魅力的な地域産品の開拓も得意だ」(地域創生事業・塩沢友孝ジェネラルマネージャー)と話す。

▲地域創生事業 塩沢友孝ジェネラルマネージャー

<アンテナショップ活況>

ふるさと納税支援を切り口に、自治体の関係人口の増加や外貨獲得(自治体外からの収入増加)などを多角的に支援できる点が、楽天の強みだ。

「自治体との最初のタッチポイントとなっている『楽天ふるさと納税』を通して、寄付額を増やしていき、その寄付額を原資に地域活性化のための次の取り組みを支援している。観光客誘致のためのプロモーションや、地域産品の販売促進など、楽天グループの幅広いサービスを通じて支援できる。各自治体との包括連携協定を締結し、キャッシュレス化の促進や子育て支援、次世代教育、健康増進まで一緒に取り組むケースもある」(同)と話す。

過去にふるさと納税の寄付をしてくれたユーザーに対して、「楽天市場」内に開設した自治体のアンテナショップで地域産品の販売促進をしたり、「楽天トラベル」で地域への旅行を促したりする取り組みも実施し、成果を上げている。

このアンテナショップの運営においても、「楽天ショップ」が活躍している。

「一次産業の事業者や、古くから特産品を販売している事業者が自分たちでECを展開するのは難しいこともある。そういう事業者の商品を一堂に集めて自治体の看板のもと販売していく取り組みだ。兵庫県の『ひょうごマニア』は『イーザッカマニアストアーズ』さんが、大分県の『おんせん県おおいたオンラインショップ』は『コスメボックス』さんが、福岡県の『福岡県よかもんショップ』は『博多久松』さんが運営を受託している」(同)と話す。

長年運営している「おんせん県おおいたオンラインショップ」は、商品を出品している取扱事業者が500社以上あり、販売商品数は6000品を超えている。

▲「おんせん県おおいたオンラインショップ」

「『コスメボックス』を運営する大木化粧品の小坂越司社長が取扱事業者のもとに足を運び、商品力や事業者の思いを確かめてから販売している。直接ヒアリングした思いやこだわりは、しっかりとページに掲載している。テレビなどで大分県の産品が紹介された際に、ネット上で『おんせん県おおいた オンラインショップ』でしか買えないものもあり、大きな売り上げにつながることも多い。地道な事業者や商品の開拓が奏功している」(同)と話す。

ページの作り込みだけではなく、長年のECの知見から、販売価格やパッケージ、販売体制などをアドバイスすることもある。購入者の声を取扱事業者にフィードバックして、商品開発につなげることもあるという。

<データで根拠ある支援>

楽天はグループのデータを生かした自治体支援にも取り組んでいる。自治体向けにデータマーケティングツール「RakuDash(ラクダッシュ)」を提供しており、ふるさと納税の寄付や地域産品の販売、観光誘致の実績データを可視化している。

「自治体外(域外)のユーザーによる自治体への寄付や、自治体内(域内)の事業者の商品購入、宿泊予約などの収入と、域内のユーザーの域外での商品購入・宿泊予約などの支出を分析し、貿易収支のような形で可視化する取り組みも行っている。データに基づき、自治体の課題や強みを分析して、戦略を立てることもできる。今後は『楽天トラベル』の宿泊予約のデータをもとに、自治体に訪れた人だけではなく、訪れる予定の人のデータも提供していきたい。観光戦略の立案に生かすことができる」と話す。

福島県とは、復興支援として「楽天市場」で販売している福島県産品のデータを生かした観光誘致の取り組みを実施した。

「『楽天トラベル』を利用している福島県内の宿泊施設に集まっていただき、勉強会を開催した。その際に『楽天市場』で売れ筋商品となっている福島の日本酒の販売データや購入者像のデータを可能な範囲で公開し、食事のプランに日本酒の飲み比べメニューを提供していただく提案をした。思い付きではなく、データに基づいた提案なので、多くの宿泊施設に受け入れてもらうことができ、プランを体験したユーザーにも好評だった」(同)と話す。

一部の自治体では、観光で訪れる予定のユーザーに、地域の店舗において「楽天ペイ」で決済するとポイントを10倍還元するキャンペーンを実施したケースもある。「楽天ペイ」を利用できる店舗の情報も伝えることで、ユーザーは利用しやすく、自治体にとっては地域での消費を促進できる取り組みとなった。

楽天は自治体に向けて、データ活用の基礎や施策立案、効果検証などを教えるワークショップ「RakuDemy(ラクデミー)」も提供している。

グループの多様な支援体制に加えて、データや教育コンテンツを活用して、自治体のDXを支援し、地域の活性化に貢献している。